エピローグ

絢子オンニ、再び 1/2

「絢子オンニぃ」


「またその呼び方……で、なんの用?」


「そんなの1つしかないじゃないですか。8位、おめでとうございます」


「あぁ……そのこと。メッセージをくれたから、わざわざ電話してくれなくても良かったのに」


 あぁ、って。昨日の今日なのに、既に過去のことになってません?


 過去は過去なんですけど、もっとこうなんというか、感想ないんですかね。


 あと、やっぱり直接会えなくても、自分の声でお祝いしたいじゃないですか。


 わかります?


「真ん中だからね。複雑だけど良かったと思うわ」


 たしかに。16位中8位。ど真ん中。


 絢子さん的には中途半端なんだろうなあ。


「それより、お宅の結よ。無事に1位を獲得できて良かったわね」


「『お宅の』って。別に私の結じゃないんですけど、そうですね。センターの座を守ることができて良かったです」


 結果発表の様子は生配信されていて、当然私は観ていた。


 1位で名前を呼ばれたとき、結の目には薄っすらと涙が浮かんでいた。


 今まで涙を見せたことがなかった結のそんな姿に、SNSは沸きまくってた。


 見てるだけで楽しかったです。


「『いつも結がセンターでつまらない』とか『またか』とか言いつつ、ファンはよくわかってるのよ。花筏のセンターは結以外有り得ないって」


「ですねえ」


「それに、圧倒的なオーラがあるからセンター以外が似合わないのよ」


「あーたしかに」


 彼女ほどセンターが似合うアイドルはいないし、それ以外のポジションが似合わないアイドルはいない、と思う。


 他の子を観ようとしても、いつの間にか目を奪われちゃうんだよねえ。


「これから結はもっとファンが増えるわよ。復帰してからダンスが力強くなったし、表現力に磨きがかかってるもの」

 貴女のおかげかしら。


 たしかに、結が送りつけてきたレッスン動画の様子は、以前とは比べ物にならない。


 数段とばしでレベルアップしてる。


 えげつないっす。


 でも、

「別に私はなにもしてないですよ。結にとって今が変わるタイミングだっただけです」

 ホントになんにもしてないし。


 謙遜けんそんなんかじゃない。


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