第18話 再始動 *光*

*光*


 突然出かけて行った結は、夜中になって帰って来た。


「どこ行ってたの?」


「2期生のライブに飛び入り参加して、Festivalに出るって宣言してきた」


「はい!?」


 急展開すぎて頭がついていきません。


 いや、復帰を決めてくれたのは嬉しいんだよ。


 ただちょっと、心変わりが激しすぎて驚いただけです。はい。


「SNSチェックしてなかったの?」


「してませんでしたね……」


 急いでスマホを見れば、【結様参戦!】【絶対1位にするからね】【体調大丈夫なのかな】【無理しないでね】などなど、心配する声、応援する声で溢れていた。


 うん、やっぱり貴女の居場所はここじゃない。


 みんなが圧倒的エースで絶対的センターな貴女の帰りを待っている。


「光」


「ふぁっ!?」


 背後から声をかけられて変な声が出てしまった。


 すみません、スマホに集中していたせいです。


「今までお世話になりました」


「あっ……帰るのね」


「うん。散々ぐうたらしてたらからカラダがなまってるし、ダンスレッスンもボイトレもすぐに再開したいから」


「そっか」


 ボストンバッグを肩に担いで玄関に向かう彼女の後を追う。


「迎えは?」


「マネージャーが来てくれる」


 おーん、遅くまでご苦労様です。


 我が儘プリンセスのお世話をするのも大変だな。


 でも、事務所は彼女の復帰を望んでいただろうし……これぐらいの我が儘なら許されるか。


 多分。


「んじゃあね、また」


「うん、また」


 ドアノブに手をかけ、私に背を向けたまま

「私、絶対にセンターで居続けるから。ずっと見守っていてね」


 表情は見えないけど、やっぱりどっか不安なんだろうな。


「勿論。結は私の推しだから」


「推し……か。うん、そうだよね」


 ん? なんか私変なこと言ったかな。


 少し寂しそうな声色に聞こえるのは何故だろう。


「それじゃあ、行くね」


「行ってらっしゃい」


 ドアを開けて星が煌めく夜の世界へ出て行った彼女に手を振る。


 貴女の努力が実を結ぶことを祈りながら。


**

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