第14話 強制なんてしない

「光」


「ん?」


 ゆっくりと瞼を開けた結は、

「Festivalに出るべきだと思う?」

 真剣な眼差しで聞いてきた。


「そうだねえ、センターで踊る結が好きだからね。でも、決めるのは結だよ」


「『出て』って言ってくれないの」


 わかってるよ、貴女がその言葉を望んでいることぐらい。


 だけど、言ってあげない。


「私が強制して出て……絶対に結なら1位を獲れる。でもそれで満足?」


 結は操り人形なんかじゃないから。


 愛して、愛されて、傷ついて生きる人間だから。


「結は、誰のためにステージに立つの?」


 誰に強制されるでもなく、私は、貴女の意思で出てほしい。


 願いを込めて言った。


「……ちょっと出てくる」


「えっ、あ、了解」


 少し俯いて、結はサイフとスマホだけを持って出て行ってしまった。


「おーん……これは説得に成功したのか?」


 バタン、と玄関のドアが閉まる音がした。


「微妙だなあ。私が支えるって言えば、出てくれると思ったんだけど、読みが甘かったかなあ」


 本人はバレてないと思ってるんだろうけど、あの子の気持ちにはとっくに気づいてる。


 だから今回はそれを利用させてもらった。


 こんなこと初めてだし、上手くできなかったんですけどね。


「まぁなるようになるか」


 大きく伸びをして、目一杯空気を吸い込む。


「てか、結どこに行ったんだろ」

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