第16話 My life

 高校を卒業してから芸能事務所のオーディションに応募しようと情報収集していた2021年12月末、新しく『花筏はないかだ』という日韓合同のグループを結成すること、メンバーを募集することを知った。


 2022年。無事にオーディションに合格して、光と再会して。


 でも光はいなくなって。


 15人いたはずの仮メンバーは2人減って、13人で花筏を結成した。


 デビューしてからの毎日は、しんどいことも沢山あったけど、楽しいこと、嬉しいことも沢山あった。


 うちの事務所は日本最大級の芸能事務所で、事務所が先輩グループよりも私たちを猛プッシュしてくれたおかげで、デビューシングルから6枚目まで1位を獲得し続けられている。


 ライブをすればいつも超満員。


 握手会は長蛇の列。


 アンチファンはいたけれど、そんなの気にならないくらいファンが愛してくれていたから、私もファンを愛した。


 幸せだった……はずなのに。


 いつの頃からか満たされなかった。


 メンバーのみんなから愛される、サチ・ジウ姉妹が羨ましかった。


 姉妹で支え合って、いつだって輪の中心にいて。


 私は、いつも輪から外れていた。


 みんなからの評価が気になって、エゴサをして、眠れなくなった。


 叩かれて傷ついても、堂々とした立ち振る舞いを意識していたら、本当の自分がわからなくなった。


 プロデューサーから言われることに「No」と言わずに「Yes」とばかり答えていたら、操り人形になったような気になった。


 苦しくて辛くても弱音を吐けない。


 だけど、光は私が望む言葉をどんなときでもくれた。


 返信は遅かったけど、歌番組や動画の感想。


 どれだけ短い文章だったとしても、心の支えになっていた。


 私がアイドルを続ける理由が、いつの間にか「光の視線を独り占めしたい」からになっていた。

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