第11話 才能は暴力 2

「だけど、結が活動休止に入ってからみんな気づいたのよ。思い知ったのよ。彼女がセンターじゃないと、このグループは成り立たないって。結が矢面に立って、グループに対する批判を受けとめてくれていたってことに」


「成程」


 遅すぎるんじゃないって気がするけど、そんなもんよね。いなくなってから初めて、その人の偉大さを知る。


 どこの世界も同じ。


「妬みも嫉妬もあるけれど、これからは結を支えていきたい、ってみんな言ってる。だからね、結には戻って来てほしい。絶対に」


 切実さが滲む声に、なんて返事をすればいいのかわからない。


 けれど、グループのみんなが覚悟を決めたのなら、

「なんとかして説得してみます」

 私も全力で結と向き合わなきゃいけない。


 喧嘩になるかもしれない。


 もしかしたら、二度と連絡を取らなくなって、合わなくなるかもしれない。


 それでもいい。


 私は、センターで花のように華やかに舞い輝く結が観たいから。


「頼んだわよ。私たちじゃどうしようもないから」


「善処します……絢子オンニ」


「またその呼び方……まぁいいわ」


 この呼び方が浸透してかなり経つのに、本人はお気に召さないらしい。


 可愛いのに。


「じゃあね。またなにかあったら連絡するわ」


「はい、私も」


 スマホを耳から話して、電話を切った。


 んじゃあ、私は私にできることをしますかあ。


「結、起きてるんでしょ。狸寝入りはやめて起きなよ」


「……」


「聞こえてたでしょ。電話」


 無言でカラダを起こした彼女の表情は、不機嫌そのものだった。

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