第11話 才能は暴力 1/2

「あの子、最初から大人びて笑顔はそんなに多くなかったけれど、最近は滅多に笑わなくなった」


「はい、ファンのみんなも気づいていると思います」


 花筏がデビューしてから、私は花筏が歌番組に出るたびに、動画チャンネルに動画がアップされる度に感想を送っていた。


 いつもすぐに返信が返ってきて、彼女からは練習のこと、仕事のことが毎日送られてきた。


 まぁ私は彼女と違って返信激遅なんですけど。


 しょうがないじゃない。他の女の子とお楽しみ中だったり、デートしてたりしている最中なんだもん。


「だからね、ここ数カ月息抜きをさせるためにご飯に誘ったんだけど、毎回断られたのよ」


「あーマジですか。練習ばっかりしてますもんね」


 センターとして恥ずかしくないように、グループを背負って立つ身として、毎日遅くまで練習していた。


「私も中々休みが合わないんですけど、合ったら家でご飯を作ってあげてたんですけどねえ……どんどん痩せていってますよね」


「痩せすぎよ」


「激しく同意」


 グループだけじゃなく、ソロの仕事も忙しい彼女は、デビュー以降どんどん痩せていった。


「ご飯が喉を通らないほど精神的に追い詰められてるのは、私もメンバーもわかってた。でも、なにもできなかった」


 電話越しだけど、絢子さんの苦しくって悔しい思いは伝わってきた。


「ねぇ光、この間の歌番組観た?」


 突然の話題転換。


「観ましたけど……どうかしました?」


「酷い出来だったでしょ」


「あー……」


 これはどう答えるのが正解だろう。「そんなことなかったですよ」って言うべき?

 いやいや、どうせ嘘を言ったってバレる。この人は勘が鋭いから。


「酷かったですね」


 結局、正直に答えた。


「あのね、結がずっとセンターに立っていることに嫉妬や妬みを抱いているメンバーは何人もいる。正直ね」


「そりゃそうでしょ」


 いくら努力を重ねても、センターに選ばれるのはいつも結。


 メンバーの中には結をまるで神様、天使みたいにあがめている人がいるって聞いたことがあるけど、大抵の人は嫉妬してる。


 暴力的な才能に。


 輝かしいセンターに立つ結に。


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