第4章 way of life
第12話 重圧 1/2
お互い顔を洗って歯を磨いて、トーストにジャムを塗り、席に向かい合わせで座っって
「「いただきます」」
お食事タイム。
食後に話し合ってもいいんだけど、多分、食べながらの方が左程ピリピリせずに落ち着いて話せると思うから、早速話を切り出す。
「『SAKURA Festival』どうするの、出るの?」
「……」
口に出してから、思った。
ド直球すぎん?
もっとさぁ、他に言い方……ないな。うん、ない。
齧る度にサクサク音を立てるトーストを味わいながら、じっと彼女の返事を待つ。
「私、センターで踊る結が好きなんだけどなあ」
「……」
サクサクサク。
互いにトーストを齧る音だけが響くリビング。
あの、流石に二回も無視されると傷つくんですけど。
なにかしら返事をしてもらってもいいですかね。
「自意識過剰って叩かれるかもしれないけどさ」
「うん」
漸く口を開いてくれた彼女の言葉を聞くために、トーストを皿に置いた。
「自分が一番人気だってわかってる。出れば、負けるはずないって。あと、絢子オンニが言ってたように、花筏には私が必要だってこともわかってる。今は」
今は、か。
そうだよね。永遠にアイドルを続けられるわけじゃない。いつかは卒業する日が必ず来る。
「自意識過剰じゃないよ。『今は』って言ったよね。その通りだよ、永遠に咲き続ける花はない。だからこそ、結には後悔しない選択をしてほしい」
あと何年結が咲き誇れるかわからない。
終わりはすぐにやってくるかもしれない。
きっと結もわかってる。
「でもさ、もう疲れたんだよ」
知ってる。わかってる。感じてた。
TVに映る貴女の様子を観ていたら、気づかない方がおかしい。
「矢面に立つのも、批判を全て受け止めるのも」
俯いてしまった結に、私は想いを込めて語りかける。
「そうだよね。だけど、電話で絢子オンニが言ってたでしょ。『これからは結を支えていきたい』って。結は独りじゃないんだよ」
「わかってるよ、そんなことっ」
勢いよく顔を上げた結の目には、薄っすらと涙の膜が張っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます