第8話 分かれ道 2

「どうして? なんで? 一緒にデビューしようねって――」


「私ね、に刺されたの」


「は?」


 一瞬にして頭の中が真っ白になった。


 なに、どういうこと。彼女に刺された?


「軽蔑されるかもしれないけど、私、社会人の同性の人と付き合ってたの。だけどね、アイドルに恋人がいるってマズいでしょ。合格発表があった日に、理由を説明して別れ話を切り出したんだけど……彼女は納得してくれなかった」


 軽蔑なんてしないよ。だって、私も貴女のことが好きなんだもの。


 言いたいけれど、言葉は喉に詰まって出てこない。


「それでね、納得してもらおうと思って、今日改めて話をしに行ったの。そしたら拗れちゃって、刺されちゃった」


 両手で目を覆った彼女は、静かに泣いていた。


「ごめん、本当にごめんね。デビュー前にこんなスキャンダル起こしちゃったら、私はもうアイドルになれない。いつか絶対にバレるから」


 ごめん、ごめん、ごめん。


 ひたすら謝り続ける光に私も泣きそうになったけれど、グッと堪えて彼女の腕に手を添えた。


「もう謝らないで……一緒にデビューできないのは辛いし悲しいけど、私、光の分まで頑張るから。センターで華開いて、散らない桜になってみせるから。約束する」


「うん、見守ってるからね」


 右手を差し出した彼女の小指に指を絡めながら、私たちは泣き続けた。

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