第8話 分かれ道 1/2

 合格発表の日。


 私たちはあらかじめ東京駅で待ち合わせをして、一緒に事務所に向かった。


「今日呼ばれたってことは――」


「合格したってことだよね」


「多分」


 これで落とされてたら笑えるね、そう言いながら、私たちは事務所に入った。


 19時。


 集められた15人に告げられたのは、「合格」の言葉。


 喜びのあまり声が出ない子、涙する子。


 私はといえば、光の手を握って「やったね」「一緒にデビューできるね!」と笑った。


 それからの日々は、ひたすらレッスン。


 先輩のバックについて経験を積んだり、韓国人のメンバーに韓国語を教えてもらったり、日本語を教えたり。


 兎に角忙しかった。


 でも充実してた。


 どんなにしんどくても隣には光がいてくれたし、嬉しいことにプロデューサーから「デビューシングルは君と光のWセンターでいこうと思う」と言われたときには、嬉しすぎて空を飛べそうだった。


 なのに、その夢は叶わなかった。


 4月の末にメディアに向けてメンバーをお披露目すると知らされた翌日、光は刺された。


 知らせを聞いて練習を抜け出して病院に行けば、申し訳なさそうに眉をハの字にした光がベッドに横たわっていた。


「良かった……生きてて」


 安堵してベッド脇の椅子に座り込んだ私に告げられたのは、

「結、ごめん。私……デビューできない」

 残酷な言葉だった。


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