第2章 貴女は私の *結*

第6話 光

 私たちの出会いは、小学生までさかのぼる。


 小さい頃から通っていたバレエ教室に光が入ってきた。


 なんて可愛い子なんだろう、って見蕩れちゃった。


 今振り返れば一目惚れ。


 同じ県に住んでいたけれど、別々の市に住んでいた私たちが出会えたのは奇跡だったと思う。


 同い年というのもあって、私たちはすぐに仲良くなった。


 友情以上の想いは彼女に気づかれることはなかった。


 それでも良かった。私自身、恋心を自覚していなかったし。


 このまま一緒に過ごせればいいと思ってた。


 だけど、別れはすぐにやってきた。


 光は中三の春にバレエ教室を辞めてしまった。


 なにも言わずに。


 後から聞いたら親御さんの急な転勤が理由だったらしい。


 当時は薄情者だと思って泣いたし、どうして連絡先を聞いておかなかったんだろうって凄く後悔した。


 ずっと一緒にいると思って油断していた私が悪い。


 それから月日は流れて。


 漸く再会したのは、2022年。


 花筏のオーディション会場。


 2次審査は各地方で行われていて、私たちはそこで顔を合わせた。


 時間も場所も同じ。


 運命だと思った。2日間あるうちの日付が同じで、時間もおんなじだなんて。


 神様なんて信じちゃいないけれど、その日ばかりは感謝した。


 オーディションの後、さっさと帰ろうとする光を引き留めたあの瞬間。


 彼女は記憶の中の姿のままだった。


 いや、身長は伸びていたし髪の毛だって全然違うかったんだけど、顔が幼いままだった。


 驚く光に、自分でも驚くほどの勢いで連絡先を交換して、なにか用事があったのか帰りを急いでいた彼女を見送ってメッセージを送った。


 再会できた喜びで震える手で【2人とも次の審査に進めたらいいね】って。


 次に会ったのは3次審査の日。


 事務所へのルートがわからなくて、東京駅でオロオロしていた私に、

「結、一緒に行こう」

 光が声をかけてくれた。


「今日も一緒なんだね」


「良かった光がいてくれて」


 方向音痴な私は、光がいなかったらずっと駅で焦っていたかもしれない。


 本当に感謝してもしきれない。

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