第5話 ダメ出し 4

「あーもうっ、イライラする」


 ソファに座って足をジタバタさせ、天井を見上げながら言う結に、

「メンバーに連絡してみたら。『今日の出来はなんだ』って」

 提案をしてみる。


「嫌」


 即否定されました。


「なんでよ」


「だって、私休みに入ってから1回もみんなからのメッセージに返信してないもん」


「えー」


 マジかい。私には1時間ごとにメッセ送ってくるくせに。


 その差はなんなのさ。


 仕方ない。


「じゃあ連絡はしなくていいから、私が感じたことを貴女に伝えます」


「ん? なに、急に改まって」


 彼女の目を真っすぐ見て、

「私は、今日のあの子たちのパフォーマンスを観て確信した。花筏はないかだには結が必要だって。結がセンターじゃなきゃ、花筏は成り立たないって」


「……」


 無言ですかい。


「結もわかってるでしょ。花筏のセンターは結以外有り得ないって」


「……」


 抱えた膝に顔をうずめてしまったせいで、結の表情は全く見えない。


 でも、わかるよ。


 悩んでるんだよね。葛藤してるんだよね。


 貴女は今、岐路に立ってる。


 アイドルを辞めるべきか、続けるべきか。


 私知ってるんだよ。貴女が「センターを辞めたい」って事務所に直談判したこと。


 受け入れてもらえなかったことも。


 全部、全部知ってる。


「私からは以上です。んじゃあ、遅めの朝ごはん……ってこの時間ならお昼ご飯か。作ってくるから待っててね」


 ゆっくり立ち上がって、キッチンに向かう。


 ねぇ結。時間はたっぷりあるんだから、沢山悩めばいいよ。


 だけどね、私は貴女にアイドルを辞める、なんて選択をさせるつもりはないの。


 絶対に復帰させてみせる。


 貴女の居場所はここじゃなくて、キラキラと輝くステージだから。


 、病院で交わした約束を忘れたとは言わせないよ。


 結がこの家に転がり込んできてからこっそり誓っていたことを、もう一度心に刻みつける。


 そんな私の耳には、彼女の呟きは届かなかった。


アンタにはわかんないよね……センターの重圧なんか」

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