第4話 やりたいことは? 3

「だから、お揃いにしたい」


「うん大丈夫、聞こえてる」


 えっ、そんなことでいいの。マジで? 折角の休みなのに?


 願望が可愛すぎる。この子は天使なのかなあ……いや、待て。


「結さ、その髪の長さがアイデンティティだよね」


「うん」


 膝の長さまである、漆黒のスーパーロングヘアは「乾かすのが面倒くさい」と言いながらも切らない、結のアイデンティティ。


 プラス、前髪重めの姫カット。超絶可愛い。やっぱり天使。


 華やかなお顔によく似合っている。


 対して私は、子どもっぽい顔で平面的で、ショートボブ。

 前髪なし。


「お揃いの髪型って言ったって、前髪しかできないけど」


「それでいい」


「ほぉーん。マジですか」


「マジです」


「ほぉーん」


 さてさて、どうするか。


 腕を組んでちょっと考える。


 前髪あると鬱陶しいんだよねえ。中学生以来前髪をつくらずに生きてきた身としては、これはこれで私のアイデンティティ。


 だけど、

「まっ、いっか。前髪だけでもお揃いにしようか」

 私の大切な推しの願いですからね。叶えてあげましょう。


「えっいいの!?」


「あははっ。自分で言ったのに、そんな驚かないでよ」


 思わず笑ってしまった。


 ホント、可愛いねえ。


「じゃっ、じゃあ今から切りに行こう!」


「待て待て待て待て。美容院予約しなきゃだから。流石に今すぐは無理だから」


 勢いよく立ち上がるな。落ち着け。


 貴女一応怪我人でしょうが。


 数日後、結と同じ長さに切った前髪を見た彼女が、

「姉妹みたい!」

 と狂喜乱舞してくれた話は、また今度。

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