第5話 ダメ出し 1/4
8月に入り、大学は夏休みに入った。
バイトとダンスサークルで忙しい毎日を送る私と、家に引きこもって鬼電、鬼メッセを送って来る一切外出しない結。
なにも変わらない平凡な毎日。
そんなある日。
珍しく朝から予定がなにも入っていなくて二人した惰眠をむさぼった。
「寝たねえ」
「寝た寝た」
お昼を過ぎて漸く活動し始めた私は、特に理由もなくTVをつけた。
「あっ」
これはこれは、しくじったかな。
急いでチャンネルを変えようとしたけれど、
「なに?」
既に手遅れ。
タオルで顔を拭きながらリビングに入って来た彼女が目にしたのは、音楽番組の特番に出演している花筏。
「チャンネル変えようか」
私は正直言って、見たくない。
自分がいたはずのグループなんて。
それでも普段は我慢して動画チャンネルに投稿される、推しカメラ――結のfocusだけは観て、感想を毎回送っていた。
でも、今日は観る理由が1つもない。
推しがいないんだもん。
「ううん。観る」
おや。てっきり結も観たくないと思ったんだけどな。
「私がいなくてもグループがやっていけるのかどうか、確認したい」
「成程」
と言いつつも、それが理由だとなあ……観せたくないなあ。
もし絶対的センターの彼女を抜きにして、花筏が完璧なパフォーマンスをしてしまったら。
結はもう二度とステージに戻ってくれないかもしれない。
それだけはなんとしても避けたい。
「花筏で『スペシャルメドレー2023』です。どうぞ」
心の中で葛藤しているうちに、彼女たちのパフォーマンスが始まってしまった。
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