第5話 ダメ出し 2/4

「なにこれ」


 曲は始まったばかり。


 だけど、これはこれは

「酷いね」


「最悪だよ」


 生歌重視の花筏は、多少の被せがあったとしても、ほぼ毎回生歌でパフォーマンスを行う。


 スカートを持って華やかに舞いながら、激しいダンス。


 普通なら歌がおざなりになりそうだけど、そうならないのは結がいるから。


 167cmで体重は40キロ前半。あまりにも細いカラダから放たれる歌声は、力強くて人の心を震わせる。


 根本的に、花筏は3つのポジションに分かれている。


 ボーカルチーム、ラップチーム、ダンスパフォーマンスチーム。


 韓国でよくあるポジション分け。


 2期生が入って来ても体制は変わらないかった。


 センターである結はボーカルチームに所属していて、メインボーカルとメインダンサーを兼任している。


 つまり、グループの柱は結。センターだしね。


 その柱がいない花筏は、

「嘘でしょ、信じられない。なんでこんなにできてないの」

 彼女が頭を抱えるのも当然と思えるほど、酷いパフォーマンス。


 いや、一応言っておくと他のアイドルグループよりレベルは高いんだよ。


 けどねえ、「振りのシンクロ率が凄い」とデビュー以来言われ続けた花筏とは思えないほど、振りが揃ってない。


「ターンしたとき軸がぶれてる。体幹がなってない。手の角度もダメ。なにもかもダメ」


 ですよねえ。結の言葉に無言で頷く。


 彼女の代わりにセンターに立っているのは、2期生のソヨンちゃん。


 1周年記念ライブでも代理を務めた、将来有望な子。


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