第459話 あれ? これって僕、記憶を弄られている?!
フォレチトン南の冒険者拠点バトルキャンプ、
ここからミストシティへ戻るまでの護衛が交代らしい、
とはいっても数回、転移テントを抜けるだけなのに、大げさだなあ。
「では、私はこれで」
「はい、ありがとうございました」
アプス神殿側の兵士に丁寧にお礼、
僕がいくら公爵になったからって、
この丁寧さは忘れたくないな、うん、今日から正式な公爵だ。
「ミスト公爵、お待ちしておりました」
「ええっと冒険者パーティーだよね?」
「先日はありがとうございましたっ!」
え? どう見ても初対面なんだけれども。
「君たち、どこで会ったっけ」
「嫌ですよ冗談は、ミストシティの冒険者ギルドでお会いしたではありませんか」
「そうだっけ、うーん、ちなみにパーティー名は?」
先頭の青年戦士は、まっすぐ僕の目を見て言う!
「ミラクルスタンダートです!」
「え、え、えええええ?!?!」
「領主様に付けていただいたパーティー名、誇りに思っています!」
いやいやいや、僕が見たパーティーは全然違うぞ、
顔つきも違うし、他のメンバーも、ええっと前回どうだっけ、
今、目の前に居る戦士剣士魔法使い僧侶弓使いポーター、人数は合ってるけど内容が違う!
(男性三人に女性三人で前と違うし、顔も風貌も、まるで違う!!)
「領主様、大丈夫ですか」
「ええっと、貴女はヴァルキュリア女性騎士団の方?」
「違います、ミラクルスタンダートです、もうお忘れですか」
こんなスマートかつ胸だけ大きい女剣士、
見たらぜっっったいに憶えてるはずだからあ!!
再びリーダーぽい男戦士が話す。
「ジン師匠から聞いて素晴らしい名前に感動しました、
奇跡を意味する『ミラクル』気絶させる攻撃を思わせる『スタン』
さらに大地を、我が道を連想させる『ダート』これで『ミラクル・スタン・ダート』良い名前を、ありがとうございます!!」
六人揃って礼をされる、
いやこれ……待てよ?
「あっ、そういう事か!」
「思い出して下さいましたか?!」
「君たち、十二人パーティーだったんだ!」「いえ六人ですよ」
えええええぇぇぇぇぇ……
「ふわぁ、おはよ」
「あっジン師匠、おはようございます!」
「「「「「おはようございます!!!!!」」」」」
やけに眠そうなジンくんがやってきた!
「おはようジンくん」
「はっ、領主様、おはようございますっ!!」
「ええっと、この子達は」「弟子の、『ミラクルスタンダート』ですよ?」
あっれえ、おっかしいなぁ。
「最初に冒険者ギルドで見たメンバーと違うんだけれども」
「いえ、初めに来た時からこの六人というか選んだのは僕ですけれど」
「そ、そうなんだ、これはいったい、どういう事なんだろう」
うーん、最初に会った六人が実は偽物、
でもそれじゃあ話の辻褄が合わないよな?
だとすると、ひょっとして……も、もしかしてこれはー!!
(僕の記憶が、弄られているう?!?!)
だとしたら犯人はレイミーさんか?!
ダークエルフって怪しい闇魔法使うイメージあるし!!
「じゃ、みんな、領主様をお城へ送るのしっかりね、ふわぁ……もう少し寝よう」
「はいジン師匠、お任せ下さいっっ!!」
「さあさあ領主様、私みたいな女剣士でよろしければ、好きに眺めながら、どうぞ」
(うーーーーん、まあ、いっか)
面倒くさくなって考えるのをやめた
だめ貴族だもの。 ミスト
(人は、無い記憶を有るように思う事があるって何かで読んだしぃ)
こうして無事、ミストシティの公爵邸まで送って貰った僕は、
結婚式までの数時間を寝室で待つ事となったのであった、のだが……
(知ってるメイドが、いない!!)
みんなして仮眠かな、でもなんでだろ。
(いや、これはやっぱり、僕の記憶を……!!!)
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一方その頃、ミストシティの某転移テント前では……
「ご苦労であった、確かメラニアだったな」
「おうよ、久々の実戦、楽しかったぜい」
「地味に中盤で活躍してくれた、感謝する」
リアが頭を下げる。
「いいってことよ、これで戻れるんだよな?」
「ああ、約束だからな、王都の、城の地下ではご苦労だったな」
「ドブ掃除はアレだったが、こっちの暗部との訓練は楽しかったぜい」
そしてリアを真っ直ぐ見て頭を下げるメラニア。
「すまなかった、そしてありがとう、とアンタの領主様に伝えてくれ」
「……気持ちは受け取った、もう会う事も無いだろう」
「へっ、腕も勘を取り戻したし、元ルメシア防衛隊隊長として最悪、ディアン大陸で冒険者でもやってやるよ!」
リアの後ろから大きなアイテム袋を持ってきて渡すカテリナ。
それを抱えて中を覗くが暗くでよくわからないようだ。
「この中が例のアレか」
「ああ、魔物崇拝者集団、魔法求道団とかいう連中だ」
「ほんとうに好きにして良いんだな?」
大きく頷くリア。
「あの戦いで、老魔道士に欠損が出た場合のパーツのため眠らせておいた、
トップクラスは自前の魔法防御で無事だったが中堅どころが何人かな、
そのくっつける作業はベルルがひとりでさっさと終わらせて、入っているのは残りだ」
その特別製、生きた人間用アイテム袋を蹴るメラニア。
「シャマルク魔法国は我がルメシアの敵国だ、良い土産になる、ありがとよ!」
「あまり長い間、入れっぱなしは精神に支障をきたす、入れたままの転移テントでの移動も……まあ、敵なら良いか」
「それにしてもあの戦争の、アルドライド側の犠牲者は」「死亡者はゼロだ」
その言葉に、メラニアはさわやかな笑顔になった。
「世話んなったな、首輪も外してくれて、ありがとうよ!」
「礼はもう良い、国外追放だ、さっさと行け」
「へいへいへい、あばよー!!」
袋をかついで転移テントに入って行ったのを見送ったリア。
「ふう、私も少し、仮眠を取るか……カテリナ、お前もだ」
「はい、団長……いえ、前団長、ええっと……リア=ポークレット公爵夫人様」
「……良い呼び名だ」
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そして数時間後、ミストの寝室。
(うーん、部屋にまだレイミーさんの匂いが残っている感じ)
そういえばボリネー先輩の動向、どうなったんだろう。
コン、コン
「あっはい、どうぞ」
入って来たのは、ソフィーさんだった!
「ミストくん」
「はい」
「以前お約束した、ふたりっきりで話す時間です」
あーそんなの作るって言ってたな。
「な、なんでしょう」
「ミストくん……これが最後のタイミングです、私と……もし、私と別れたいなら」
「はぁ」
この期に及んで。
「私は別れたくありませんが、ミストくんがどうしても」
「別れませんよ」
「でも、もし私の事が実は信じきれなくて」
ぎゅうっとソフィーさんを抱きしめる!
「僕が、嫌いですか」
「いえ、好きです、愛しています、だから、ミストくんがもしそうでなければ、ミストくんの私達との記憶を消して……」
「そんなこと、しないで下さい、プロポーズしたのは、僕ですよ」
抱き返してくれるソフィーさん。
「あ、ありがとう、うれしいっ」
「ソフィーさんが例え、どんな人だったとしても、この気持ちは変わりません」
「じゃあ、じゃあ私の正体を知っても……」「もちろんです」
正体、かぁ。
(やっぱりあるんだ、正体)
「ミストくん」
「はい」
「結婚式直後の、答え合わせ、楽しみにしていますね」
少し溢れそうになった涙を拭いて、出て行ったソフィーさんだった。
(ソフィーさんの正体、それは……!!)
僕の予想、最後に出す答えと、ちょっと違ってきたかも?!
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