第437話 二夜の予定を一晩で

 僕は気が付くと頭を抱えていた。


「どうしたの? ミストくん」

「あの、ミストさん、何か問題でも」

「あわわわ、サリーめが、このサリーめが何か、そそそ粗相をっ?!」


 僕は気を落ち着かせて、ベッドに乗ってきた三人に話す。


「予定が、ごっちゃになっちゃった」

「どういう予定なの?」

「うん、結婚式前々夜は、少し前から予定していた、

 エスリンちゃんサリーさんと三人で過ごす夜って決めていたんだ」


 現にこうして、ふたりとも来てくれているし。


「では、私が余計だと」

「ソフィーさんにそんなこと言わないよ!

 だけれど、ソフィーさんとは結婚式前夜って決めてたんだ」


 ふうっ、とため息をつくソフィーさん。


「聞いていませんが」

「うん、言っていない」

「それは予定とは言いません!」


 あっ、怒られちゃった。


「ごめん、だめ貴族で」

「貴族以前の問題です!」

「あっはい、ごめんなさい」


(計画はきちんと相談して、だよね)


 なにやらエスリンちゃんサリーさんまで申し訳なさそうにしている。


「ミストくん、私の予定では結婚前夜はみんな、おのおの別々で過ごします」

「えっ、いつそんなの決まったの」

「それぞれがそう決めたら、そうなります」


 ひょっとして、常識?!


「前もって教えてくれても」

「それぞれが結婚に備えて心の準備をする大切な時間です、女性は特に」

「エスリンちゃんも?!」


 ゆっくり頷いている、

 そしてサリーさんは拘束で頷いている、なんだこの人形。


「うん、まあ確かに僕なんかのお嫁さんになるのは」「ミストくん!」「はいっ!!」


 怒りの正妻モードっぽい。


「結婚したら自分で自分を卑下するのは禁止です、良いですね?」

「わっ……かりました」「ちゃんと言って」「わかりました、ソフィーさんっ!!」


 なぜかエスリンちゃんサリーさんが安心している、

 やはり正妻は強いのか、そしてひょっとして怖いのか。


「えっとじゃあ明日の夜は僕、ひとりで」

「少なくとも正妻側室、それと愛人準愛人とは控えていただきましょう」

「と、いうことは」「後はご自由に、独身最後ですから」


 でもさすがに最後の最後で遊ぶつもりは……


「あっ、じゃあ今夜はひょっとして二夜分まとめて」

「何がひょっとしてかはわかりませんが、今夜一緒に寝るのはこのメンバーですね」


 これって今夜エスリンちゃんサリーさん、

 明日夜ソフィーさんとっていう僕の考えが読まれていたっていう事?!


(ひょっとしてソフィーさんには、人の心を読める異能力が?!)


 いや、僕の思考回路など、いとも簡単に推測できそう

  だめ貴族だもの。 ミスト


「う~~~ん」

「御気分を害されたのでしたら帰りますが」

「いやいやソフィーさん、そういう事じゃなくって」


 結婚後の対ソフィーさんが、結構怖い。


「実は最終日、独身最後の夜にソフィーさんに聞きたい事、確認したかった事が」

「あら、何でしょうか」「ついでだからエスリンちゃんサリーさんも聞いてって」


 ここで気を使って席を外されてもね、席っていうかベッドだけれども。


「はい、ミストさん」「あわわわわ、よろしいのでしょしょしょうか」


 さあ、ソフィーさんに最終確認だ。


(で、僕の事、どうして好きなの?! とかは聞かないよ!)


「ソフィーさんは、僕で良いんだよね?」「はい」


 即答だ。


「その、僕と結婚する、結婚式を行って、本当に結婚するんだよね?」「そうです」

「ソフィーさんって、僕に、嘘つかない?」「どうでしょうね」「え?!」


 どういうこと?!


「つまりソフィーさんは、僕に嘘を」

「必要であれば付きますが、必要でないなら付きません」

「それってつまり」「人は、人間はみんなそうですよ、おそらく亜人も」


 なんだか哲学的な話に持っていかれて誤魔化されそうな予感!!


「まず僕が心配しているのは、急に、突然ソフィーさんが、

 もしくはソフィーさんたちが居なくなってしまう事です、理由はどうあれ」


 そんな夢を見たような気もするし。


「それはどのような理由なんでしょうね」

「う~~~ん、実験?!」

「ミストくんがもし、私達が急に居なくなったらどのような言動を取るか、とかですか」


 そんな実験、たちが悪すぎる。


「あとは単に、ん~~~……虐め?!」

「私って、そんなに酷い女に見えますか?」「い、いや」

「ミストさん、謝って下さい」「ですわですわ、わわわわわ!!!」


 エスリンちゃんサリーさんにまで怒られちゃった。


「ご、ごめん、ごめんなさい」

「私は、私達はミストくんを、むしろ逃がしませんから」

「それってひょっとして……生贄か何か?!」「私達への、という意味では合っているかも」


 やっはりソフィーさん達は、

 人を喰う悪魔か何かだったのかー?!


「もう、そんな表情しないで下さい」

「とにかく、目が覚めたらみんないなくなってた、という事は」

「無いですね、アルドライドを捨てる事になっても、ずっと一緒です」


 安心したいんだけれども……


「んっと、ソフィーさんベルルちゃんが妊娠しないのって」

「避妊魔法ですが、何か?」

「ですよねー、じゃあリア先生にも」「そうですね」


 うん、これずっと引っかかってたんだ、

 言うとアレだけど、一年間、定期的に結構やる事はやっている、

 でも妊娠してるのってアメリア先生だけなんだよなぁ……


「あっ、エスリンちゃんは」「かけていません、これはまあ治療の問題です」

「そうなんだ」「ミストさん、結婚したら、頑張りましょう」「う、うん、エスリンちゃん」

「わ、わわわわ、わわわーわーたーくーしーめーもおおおおお!!!」


(メカクレは黙れ! とか冗談でも言ったら本気でションボリするんだよな)


 まあサリーさん、今となっては嫌いじゃないし、好きだ、珍獣的に。


「ミストくん、他には」

「あっはい、ん~~……僕がハーレム作ってるみたいに、

 ソフィーさんも浮気っていうか、一夫多妻みたいに一妻多夫したりしない?」


 むぎゅっ、とほっぺを摘ままれた!


「私の相手は生涯、ミストくんだけです!」

「は、はひぃ」

「ベルルちゃんもですよ、あと他の皆さんもミストくんに会ってからは、ミストくんだけです」


 リア先生のアレはノーカンで良いのかよ、とは口には出せない。


「それじゃあソフィーさん」「はい」

「……今の内に、結婚前に、僕に対して嘘ついてる事、黙っている事があったら言って」


 あ、黙り込んじゃった。


(やっぱり何かあるのか、例えば結婚式とかに!!)


 リア先生がいつか言っていた『バンザーイなしよ』的な!!


「ミストくん」

「はいソフィーさん」

「愛しています」


 そう言って僕を見つめたまま……


「そ、それで」

「それが答えです」「はぁ」


 う~~~ん、

 こうなるとその言葉も本当か?! ってなるな。


「ソフィーさん」「はい」

「……僕も愛しています」「嬉しい……!!」


 ようやく僕に唇を寄せて……


(……ここまで来て『信じない』っていう選択肢は。無いよな)


 唇が離れるとソフィーさんが宣言する。


「今夜は避妊魔法はかけません!」

「えっ」

「という事で、エスリンさん、サリーさん、参りましょう」「「はいっっ!!」」


 一気に三人で襲いかかってきた!!


「わっ、わわわっ、わあっ、わかったから、わかったからあああああ!!!」


 こうして僕は美味しくいただかれたのであった。


(明けたら結婚式の、前日かぁ……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る