第438話 結婚式前日の朝はお仕置から
結婚式の前日、外は曇り空で雨は一旦止んだみたい。
みんなでの朝食とはいかず、ソフィーさんベルルちゃんエスリンちゃんと頂いている。
「ミストくん、もうコロシアムで演習は始まっているそうよ」
「えっ、いつのまに?!」
「夜明けと共にですわ、そしてリアさんは騎士団最後の日ですわ」
あっそうか、騎士団長どころか騎士団所属ラストか。
「それにしては静かだね、コロシアムって近所なのに」
「元々の防音もありますが、最初の訓練は『無音演習』だそうです」
「ですわ、まったく音を立てずにする集団演習ですわ、『サイレントウォー』とも呼ばれているそうですわ」
なにそれ凄そう面白そう!
「その指揮をリア先生が執っていると、エスリンちゃん見たい?」
「はい、リアお姉様の最後の勇士でいらっしゃいますから」
最後かぁ、そう言われると僕も見たいけれども。
「えっと、僕は朝食の後、すぐ行かないと駄目?」
「それに越したことはありませんが、用事があるのでしたら」
「うんあるね、そこまで大した用事でもないけど一応、僕が行かないと」
そう、お仕置の確認である。
「ミスト様、本日のスケジュールはわかってらっしゃいますわ?」
「えっ、一日中演習じゃないの?」
「演習も一部、二部、三部と分かれておりますわ」
何それ初耳なんですけれども!
「ええっと、今やっているのが一部?」
「そうですね、無音演習が昼前に終わって第一部終了、
第二部はお昼に国王陛下も加わって、見ている方はお祭りみたいな演習、
第三部は夕方まで予備役隊、いわば二軍三軍の演習です、観客もすでにいっぱいだそうで」
お金取っているんだろうか、
その場合の収益が気にならない事もない。
「じゃあ二部に間に合えば良いかな」
「ですわ、遅くともその時間にはいらして下さいですわ」
「でもソフィーさんベルルちゃんが見てるなら僕なんて」「ミストくん!」「ミスト様!」「ミストさん!」
あっ、エスリンちゃんにまで怒られた!
(ちょっと嬉しい)
「うん、まあ所用をさくっと終わらせてくるよ、確認だけだし」
という感じで朝食が終わり、
僕が向かった場所は旧中央街その中心、
女神像噴水前のフォレチトン珍名物、領主お仕置ベッドである。
「ううう、見るな、見るなあああっっ!!」
「どうして私が、この齢でこのような辱めをっっ!!」
うん、リア先生のご両親が無事、
全裸に亀甲縛りで吊るされている。
「ムラサメさん、監視ご苦労様です」
「はい、日の出の無音演習が始まったタイミングで、刑罰を」
「お、お前、早くさっさとここから降ろせ!」「そうよ不敬よ不敬!」
まーだ立場がわかってないのかこの毒親は。
「僕の妻を長年に渡って苦しめた罰にしては、生易しい方ですよ」
「元副騎士団長にこのような事をして、只で済むと思うのかっ!」
「そうよっ、早くベテランの騎士団を、部隊長クラスを呼んできなさいっ!!」
そのあたりはみーんな演習で出払っているんだよなあ。
「父上、母上、何をしていらっしゃるのですか」「これはまた面白いものが」
あっ、リア先生の弟二人がわざわざ見物に来た!
「アルフィー! アイザック! すぐに降ろせ!!」
「何やってるの、これは命令よ、今すぐこれを、ほどきなさいっ!!」
ご両親の叫びを冷たい目で見るアルフィーさんと、
にやにやしながら見ているアイザックさん、うん、
もう毒親から解放された感じかな、僕は一応尋ねる。
「おふたりとも、演習は」
「陛下のいらっしゃる第二部からで良いと聞きました」
「こんな面白い物が見られるとあれば、そりゃあ抜け出してきますよ!」
聞けば二人とも婿養子らしいからね、
子供三人に見放された毒親の哀れな末路だ。
「そっ、そうだ、陛下を、国王陛下に連絡を」
「だれかー! 陛下にっ!、元副騎士団長の妻をこんな目に合せて、ただで済むはずが……」
「ほうほう、これが不敬の罪人か」
えっ、僕の背後から陛下がっ?!
「し、失礼致しました、背中を見せてしまってっ!」
「良い良い。フォレチトンの治安をしっかり護っているようでなによりだ」
アルフィーさんもアイザックさんも畏まって片膝着きだ。
「へ、陛下、この不敬な輩をなにとぞっ!」
「そうですわ、今すぐにでも、この者達をっ!」
「元副騎士団長風情が何を言うこの不敬者が!!」
あっ、国王陛下が不敬って言っちゃった。
(さすがに顔色が変わったな、いや吊り下げられ続けたからじゃなく)
「し、しかしっ、この者はっ」
「あっ、あくまでも娘の夫を注意しただけですわっ!」
「ミスト=ポークレット新公爵よ、いっそこやつら、焼いてみてはどうかの」
(国王陛下様からの素敵なご提案きちゃったあああああ!!!)
「えっと、こんなのでも、いや失礼、公爵家として側室とはいえ、
義理の両親を焼き殺すのはさすがに不敬といえども」
「そうか、ではどうする」
「結婚式が終わるまでは、これでいいかなと」
さすがに食事トイレ休憩はあげるけどね、
吊るし方も変えないと腕とか紫になっちゃうし。
「よしわかった、では新公爵もそろそろコロシアムへ行こうぞ」
「はいっ、陛下!」
「お待ち下され、なにとぞっ、なにとぞ御慈悲を!」「もう嫌あぁぁぁ……」
見張りのクノイチさんを置いてみんなでコロシアムへ、
ってよく見たら陛下のお伴多いな、キリィさんモリィさんまで居る、
アルフィーさんアイザックさんも毒親を最後に一瞥してさっさとついて行く。
(解放後はフォレチトン永久追放だけど、にもかかわらず何かしてきたら、今度は国外追放だな)
こうして転移テントでコロシアムへと移動すると、
陛下は陛下用のバルコニーのある上階来賓席へわらわらと、
アルフィーさんアイザックさんは騎士団の控室の方かな、行っちゃった。
(僕はいつもの、下の来賓席だ)
見るとソフィーさんベルルちゃんの間が空いている、うん、僕の定位置だ、
近づくと気付いてくれた、奥の席にはエスリンちゃんもサリーさんと並んで座っている。
「それにしても静かで……」「シーーーッ!!」
ソフィーさんが人差し指を口前に!
場内を見るとうわっ、凄い数の兵士がめっちゃ動いてるのに、
動きの圧が来るだけで、音がほとんど聞こえない、小さな風が吹く音くらいだ。
(音をたてないように座らなきゃ、そっと、そーーっと……)
『プー』
座った瞬間、屁をこいた、
だめ貴族だもの。 ミスト
(奥さんたち総スルーなのはこれ、ありがたいのか?!)
とにかく、大人しくしていようっと。
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