第372話 やったあー! ねんがんのぐひひぐへへぐふふふふふ 前編

「という訳でミランダさん、行って参ります」

「はい、ソフィー様ベルル様リア様には、しかとお伝えしておきますわ」


 直接会って言うと絶対に後ろめたさを隠せない、

 こういうのは『バレなければ許して貰える』の定義を元に、

 今夜は友人と過ごす趣旨の伝言のみを残して、すみやかに実行へ移す事とした。


(メイドのエスリンちゃんも今ここに居るけど、目どころか顔も見れないよっ!!)


「では遅くなるかもしれないので、帰りは気にしないで」

「行ってらっしゃいませ」


 後ろめたい事があるのでメイドエルフの手引きでこっそり裏口から外へ、

 そしてミストシティの怪しい物陰へ入るとすでにそこには!!


「アレグ、メイソン!」

「おう、待ってた」「本当にここで良かったんだなっ!」


 続いて別の方向から二人が来る。


「ミスト!」「なんとか誤魔化してきたよ」

「アレクス、セス! 呼び出してごめん」

「いやいやリベンジだろう?」「誘ってくれて嬉しいよ」


 学院時代Gクラスの学友ふたりに、

 幼い頃の幼馴染ふたり、うん、本当の友達だ。


(もちろんサーシャもだけど女子は今回ごめん!)


 とアレクスの奥さん予定の幼馴染に心で謝りながら、

 メイドエルフの後をついていく僕たち悪企みの五人。


「いやあミスト、今日ほどGクラスだったのが良かったって思った日は無いよ」

「そうだぜっ、それで、ミストが言っていた物はっ!」

「うん、ちゃんと用意してあるよ、精力ポーション改、強化版をひとり五本!」


 アレグ、メイソンに渡しアレクス、セスにも渡す。


「前よりコンパクトだな、でも濃そうだ」

「それよりも本当に、本当に大丈夫なんだよな?!」

「うん、今回はチケットの入手ルートがちゃんとある、ほら!」


 僕はサキュバス温泉特別VIP無料招待券を配る、

 アレグがそれをまじまじ見てニヤけながら話す。


「すげえな、さすが領主様!」

「しかもこれ無料って! ほんとかっ?!」

「メイソン、疑わなくても大丈夫、このチケット、ボリネー先輩から入手したんだ」


 そう、サリーさんにお願いすると確実に筒抜けになるため、

 ボリネー先輩に何とか裏で入手してきてくれないかお願いしたら、


「大きい貸し、みっつデュフよ」


 との言葉と共に渡してくれた無料券だ、

 でもあくまでも『大人のアドバイス』として、


「現地でのチップはちゃんと渡すデュフ」


 なんていう忠告を貰った、

 ということでだ、みんなに渡そう。


「まだ到着してないけどみんな、これも」


 受け取った物をまじまじ見るアレクスとセス。


「ミストこれって、銀貨二枚に金貨一枚」

「お駄賃までくれるのか?! ミスト、変わったなあ」

「違う違う、これは現地で渡すチップ、どっちを誰に渡すかは流れでわかるから」


 一応、ボリネー先輩から聞いたが、

 普通は聞かなくてもわかるらしい。


「ミスト様、転移テントに着きました」

「あっはい、ありがとう、みんな行くよ」


 複雑に入り組んだ、隠し通路みたいな建物迷宮を進んだ先の転移テント、

 初めて入ったそこから出た先は見た事もない森だった、どこだこれは。


「秘密のルートですので他言無用で、ここから少し歩きます」


 エルフメイド三人が警護してくれながら進む、

 途中、そこそこ強そうな敵が出るも瞬殺してくれるのはいいが、

 これってきっと僕や僕らがこのルートで再び来ようとしても、警備が居ないと無理だよって事なんだろう。


(そもそも入ってきたテントが見つからなさそう)


 そうこうしているうちに、

 ほどほど進むと見覚えのある一帯が。


「あっ、ここに抜けるんだ」

「はい、サキュバス温泉ダンジョンの裏山です」


 ここからなら後は普通に下りるだけだ、魔物もいない。


「それでは我々は良き頃合いに迎えに来ますので」

「それまでは十分にお楽しみ下さい」

「もちろん誰にも喋りませんので、ではのちほど」


 そう言って来た森へ戻って行った、

 うん、ここから先は男五人でパラダイスを満喫するぞー!


「みんな、誕生日前に、結婚前に、こんな事につきあってくれてありがとう」


 アレグとメイソンが頷いている。


「俺ら、友達じゃないか!」

「そうだよっ、良い事も悪い事も、楽しい事も辛い事も、俺たちは一緒だからさっ!」


(なーに涙ぐんでるんだよっ!!)


 そんなに感動する事か?!

 そう思いながら今度はアレクスとセスを見ると……


「いいけど本当にバレないよな?」

「今度の今度こそ、大丈夫だよな?!」

「うん、準備は万全、さあ、みんなで行こう!!」


 そしてサキュバス温泉正面入り口で目にした物は……!!


「な、な、、なんだこれえええええ?!?!?!」


 そこには『歓迎 ミスト=ポークレット侯爵御一行 五名様』の大きな看板が!!!


(通行人みんな、ジロジロ見てるううううう!!!)


 やはり何もかも筒抜け

  だめ貴族だもの。 ミスト


「えっとみんな……帰る?」

「い、いや、犠牲はミストだけだろう」

「かっ、歓迎なら仕方ないなっ!」


 というGクラス組に対し幼馴染は……


「ここまで来て帰るのは……なあ?」

「ミスト、中に誰か見知った女性が居ないか見てきてくれ」

「うんわかった、そこは責任取るよ」


 と言ったものの、待ち伏せは無いようだった。


(よし……入るか!!!)


 ※こんな話が後半へ続いてごめんなさい。

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