第371話 勇者愛人アメリア先生

「失礼します」

「ミスト殿、今日は賑やかね」

「あっはい、学友だけでなく、先生までいっぱい来ちゃって」


 アメリア先生の勇者爵邸、

 今もほぼすれ違いで学院の先生が訪ねていた所だ。


「そんなに大して教師らしい事もしてなかったのに、訪ねてきてくれて」

「そもそもアメリア先生は、伝説の勇者ですから」

「あら、私は見世物か何かかしら?」「いえ、それだけ敬意を」


 まあ噂で伝説級の長話、大演説を学院でやったとは聞いたが、

 あれは僕が告白イベントのやり直しをするときに在校生が邪魔しないよう、

 時間稼ぎをしてくれていたと後で聞いて申し訳ない気分になった。


(アメリア先生にも、そして生徒にも)


「それでもうすぐ夕食だけれど、どうしたのかしら?」

「はい、準愛人、愛人に情報を聞いてまわってきたので、その報告と」

「情報整理ね、いいわ、つき合うわ」


 アメリア先生のベッドの横、

 付き添いのような場所に置いてある椅子へ腰をかける。


(領主謁見の座椅子より、めちゃくちゃ座り心地良いな)


 まあそんな感想はどうでもよくて。


「準愛人、愛人の皆さんが僕を好きな理由をまとめると……」


 サリーさん:この環境が幸せだから(で、いいのかな?)

 エスタさん:娘のため

 ジゼルさん:工房を用意してくれたから(ドワーフの世界ではプロポーズ)

 モリィさん:行き着いた流れで

 キリィさん:そういうミッション、それも愛

 ミランダさん:お世話したい系メイドにとって究極形だから


(うん酷い、我ながら色々と酷い)


「という事なんです」

「私は?」「あっはい、アメリカ先生は」


 アメリア先生:若いから、裏切らないから


(あとなんかあった気がするけどいいや)


「これで準愛人、愛人、意見が出そろいました」

「それで結論は出たのかしら?」

「はい、えっと、愛人の皆さんについては、貴族の愛人らしいなっていうか」


 あくまで愛人だから恋愛に期待しちゃ駄目ってことなのかな、

 それがもし、正妻側室にも当てはまるとしたら、導き出される答えは……?!


(いや、それは明確に否定されたはずだ)


「ミスト殿、他にも何か聞いて回ったのではなくて?」

「そっ、そうですね、ソフィーさんベルルちゃんが僕を好きな理由のヒントを、それもまとめると……」


 サリーさん;ええっまだ気付かないんですかぁ?!

 エスタさん:メイド仲間にもそういうのが居た

 ジゼルさん:私も似た物がある

 モリィさん:理由は明確なもの

 キリィさん:きちんとした意志があるもの

 ミランダさん:知らなくても良い、そんな程度の理由


(これもう、わっけわかんないな、それと記憶から追加で……)


 アメリア先生:共感できる人は居る、私はそれ程じゃない

 エスリンちゃん:重大なヒントをすでに言ってしまった


「エスリンちゃんに関しては初期の頃、戻って来たばかりの頃かその直後かに何か言っていた気がするんです、

 それが今となっては物凄く核心を突いたヒントらしいのですが、憶えてなくって」

「残念ね、もう一度教えては貰えないのよね?」「はい、というかそこをどうしてもって聞いたら反則な気が」


 あくまでも自分内ルールだけれども。


(そしてやっぱり最大にして最も衝撃的なヒントはコレだ)


 リア先生:なんだそんな事か、と笑って済ませるかもしれないし、血の涙を流して発狂するかもしれない


「あっ、アメリア先生、この『血の涙』って何か重要なヒントだったりします?」

「それは単なる比喩表現ね、別にそこは『頭を抱えて』や『のたうちまわって』でも一緒よ」

「そ、そうなんですか……」


 実際、物理的に血の涙を流すような行為や呪いじゃなくって良かった。


「答えはまとまりそうかしら?」

「んーーーー、大きくわけて、みっつ!!!」


 指を三本立ててみる。


「あら、ではひとつめは?」

「宗教的な理由」

「なかなか興味深いわね」


 あれ、でもこれって否定されてなかったっけ?


「なら、ふたつめは?」

「本当は実は愛しておらず、他の理由がある!」

「その理由は?」「わかりませんっ!」


 でもこれだと完全に嘘つかれてる事になるな。


「最後に、みっつめは?」

「はい、全ては夢でした、あはははははは」

「……」


 黙り込むアメリア先生、

 あれ、これひょっとして、正解?

 思わず自分の頬をつねってみる、うん、痛い。


「アメリア先生?」

「私も思うわ、この幸せが、実は夢なんじゃないかって」

「死ぬ前に神様が見せてくれる」「だから夢だったら私が嫌よ」


 ……真剣な表情にさせてしまった。


(でも、本当に答えに困ったら、これでも言うかな)


 言った瞬間、


『せいか~~~い!!!』


 って言って世界が崩れたりして!


(ま、まさかね)


「そういえばミスト殿、男性陣にも聞くんじゃなかったかしら?」

「はっ! 聞きました、ガブリエル辺境伯と、父上と、マンタ爺ちゃんに」


 成果はあまりなかった記憶が。


「お友達には?」

「……今夜これから」

「そう、間違ってうっかり答えを聞いてしまわないようにね」


(えっ、答えわかってるの、居るの?!)


「とにかく、じゃあこれから友達と、親睦を深めてきます」

「……何やら悪い事を企んでいるようね」「ぎくり」

「遊べるのは結婚式まで、スケジュールを考えるとそうね、今夜がラストチャンスかもしれないわね」


 うん、そうなんですよ、だからなんですよー!!


「で、では行ってきます、今夜は遅くなるかも」

「もう私は出ないから、安心して行ってらっしゃい」

「は、はいっ、行ってきまあぁ~~~っす……」


 どこへ行くかはお見通し

  だめ貴族だもの。 ミスト


(さあ、アレグとメイソンと、他ふたりと合流だあああああ!!!)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る