第307話 溢れそうな場所には蓋をしよう
「へー、このダンジョンなんだ、スタンピードを起こしそうなのって」
ガラント帝国と我がアルドライドの国境付近にあるダンジョン、
このあたりは国境が曖昧というか互いに所有を主張しているものの、
あまりに危険過ぎてS級パーティーしか出入りを許されていない魔のダンジョンだ。
「しかし、こいつらが抑えていた訳ではなさそうだな」
リア先生の言う『こいつら』とは、
ダンジョンのまわりを固めていた帝国兵士だ、
表向きはダンジョンの監視らしいが、どうも様子が違った、らしい。
(僕にはさっぱりだったけれどもね!)
「ソフィーさんベルルちゃんも、そう見えました?」
「はい、ダンジョン内を警戒するのでは無く、ダンジョンへ来る人を警戒していました」
「ですわ、冒険者の格好なのにあれだけ警戒していたという事は、すなわち、そういうことですわ」
どういうことなんだろう、とは聞けない。
「キリィさんモリィさん、つまり話をまとめると」
「中がよほど厳重に、それそこソフィー様やベルル様レベルの結界魔法でもされていない限り、
外側だけを向いて警戒しているというのは考えにくいです、中で警戒している兵士が居れば別ですが」
「そして我々を見るなり、あきらかに敵意を持って構えました、その時点でソフィー様ベルル様が、
瞬時に眠らせたのは正解と言えるでしょう、おそらく彼らはこのダンジョンを護っていました」
ほぼ一瞬でそこまでわかるんだ凄いな、
最後列のエルフ隊も頷いている、わからなかったのは僕だけか。
「で、攻略ってどのくらいかかるんだろう」
「伯母上や武神の話だと地下千階だ」
「……ええっと、ちょっとよく聞き取れなかったのですが」
千ってあれだよね、いち、まる、まる、まる、1000っていう。
「ソフィー、ベルル、中の様子はどうだ」
「……大量の魔物がスタンバイしているようです、それはもう、凄まじい程に」
「ですわですわ、感じる魔力も凄まじいですわ、わたくしどもが入れば栓を開ける事になりますわ」
えっ、じゃあ入ったら魔物の嵐が、スタンピードが?!
「ええっとえっと、この人数、9人で一斉に湧いてくる魔物の攻略は」
「ソフィーとベルルならやってやれない事も無いだろうがおそらく、きりがない」
「じゃあどうすれば……??」
様子をうかがっていたソフィーさんベルルちゃんが僕を入口へと手招きする。
「さあ、背中に手を」「あててくださいませですわ」「あっはい」
言われた通りあてると二人はそれぞれいつもの杖を出す、
そして無詠唱ながら魔法をかけたのだろう、
見えない壁が張られた魔力を感じる、しかもかなり分厚い。
(合同教会の女神像前みたいに、濁らせて可視化してくれるとわかりやすいんだけどな)
続いてベルルちゃんがアイテム袋から魔石を出す、
結構大きな光魔石だ、これをソフィーさんと一緒に念じると、
光の渦になってダンジョンの奥へ入っていった、この渦、何かに似ている。
「さあベルルちゃん、次々行きましょう」
「はいですわソフィーお姉様」
そしてまた光魔石にして渦にして奥へ、
それを何度も何度も繰り返すのだが、
魔石の大きさが少しずつ大きくなっている、すなわち渦も。
「……あっ、この渦って」
「ミストくん、気付きましたか?」
「うん、ダンジョンの最奥、ボスの後ろにある禍々しい闇の渦、あれの光版だ!」
あの闇の渦が何もかも吸い込みそうな怖さなら、
これは光が、浄化されるような魔力があふれ出ている感じが取れる。
「そうです、これは魔物を自動で追いかけて倒してくれる光魔法の渦です」
「ゴーレムを研究した結果、似たような物を造るのに成功致しましたわ」
あーつまり、あの例のゴーレムは自動で人を追いかけるけど、
こっちのこれは自動で魔物を追いかけるようになっているのか。
「それに任せるんだ」
「つい先日完成、いえまだ試作品の延長ですが」
「これでしたらダンジョン攻略も無傷で済みますわ」
アイテムとか壊さないといいけど。
さらにどんどんどんどん光魔石を渦にして送り込んでいく、
そして大きさもどんどんどんどん大きくなっていき……
「次が百体目ですね」
「これ以上の大きさはおそらく突っかえますわ」
と、僕ら九人パーティーが固まったくらいの大きさの魔石を、
これまた巨大な渦にして送り込む、無慈悲に魔物を狩ってくれそうなでかさだ。
(リア先生は一応ダンジョンの奥を警戒している、後ろではエルフが後ろを見てくれてるな)
キリィさんモリィさんは僕の左右をきっちり警備中だ。
「ミストくん、次が最後です、めいっぱい念じて下さいね」
「う、うん、わかった」
そしてベルルちゃんが取り出したのは、
死の砂漠で道を作った時に埋めてたような光魔石、
いや、あれより大きい、もうダンジョンがこれだけで蓋されそう。
「さあベルルちゃん!」「はいですわああ!!」
思いっきり念入りに魔力を込めているのがわかる、
そして光の渦が本当にダンジョンの入口いっぱいまで広がって、
完全に塞いでしまった、うん、これは絶対にもう魔物は出てこれないだろう。
(……魔王レベルでない限りは)
いや、やっぱ魔王でも無理かも。
「ふぅ、これで蓋をし終わりました」
「あとは中で勝手に暴れて魔物の大虐殺ですわ」
「手間がかかった分、効果あるといいね」
そして離れ、入口を土魔法で隠すソフィーさんベルルちゃん、
全体の地面の高さも上げて、普通の森の中って感じにしちゃった。
(あーあ、これでもうダンジョンの場所もわからなくなった)
いや、全てが終わった後に来たらソフィーさん達なら掘り起こせるだろう、
その後でゆっくりアイテム回収かな、また例の回収専用アイテム袋が大活躍しそうだ。
「終わったようだな」
「はい、リア先生は何もしていませんね」
「ミストがそれを言うか」「い、いえ」
ついつい余計な事を言って睨まれた
だめ貴族だもの。 ミスト
(あらためて見ると、睨むリア先生も美人なんだよなぁ……)
「これでガラント帝国絡みはとりあえず完了です」
「あとはゴーレムの動向ですわ、定期的にベルベットが見に行くはずですわ」
あーまた、たったひとりで働かせちゃうのかぁ。
「僕が飛べたらなぁ……」
「あら、ミストくんも行きますか」
「良い考えですわあ!」
……えっ?!
(ま、まさかあ!!)
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