第306話 たったひとりの少女戦記

 ガラント帝国の帝都ガララン、

 その遥か上空に白装束の少女がアイテム袋を持って旋回していた。


「んー、そろそろいっかなー?」


 日が傾き始めたタイミング、

 帝国民の昼食が終わって落ち着いた頃だろう、

 アイテム袋を拡げようとすると鳥系の魔物が襲ってきた。


「ほーりーあろーー!!」


 あっという間に串刺しにし、

 あらためてアイテム袋を拡げ真下へ向ける。


「まずは金色さん、いってらーーー!!」


 落下していくゴールデンゴーレム、

 上空特有の強風も物ともせず帝都へと落ちて行った。


「つぎはーだいさんとしー、あの山の方でーーー」


 目の前には気配を察知したのかワイバーンの群れが!


「んーー、めんどくさいからよけちゃいまーーー!!」


 素早くワイバーンの群れを回避する、しかも上に!

 これにはついてこれないようでギャアギャアと喚いている。


「さむいからー、はやくおわらそーー!!」


 こうして第三都市ガラルム上空でも、

 シルバーゴーレムを無事、落下させる事が出来たのだった。


「にんむかんりょー、かえりまーーー!!」


 と、そこへ現れたのは巨大なドラゴンだった!


「んー、これは逃げたらまずいかなーー」


 アルドライドまで戻ると連れて来る可能性を感じたベルベットは、

 ガラント帝国奥の火山までドラゴンを誘導する、が、ここはドラゴンの巣だ。


「んー、ここまでくればいいかなー」


 アイテム袋から豪華な杖を出すベルベット、

 そして複数に増え向かってきたドラゴンに向けて……!!


「びっぐばんめておーーーーー!!!」


 ズッッッ……ガーーーーーーーーン!!!!!


 これが『ガラント帝国史上最大の火山噴火』とのちに記される、

 大規模溶岩流出の正体である事が判明するのはかなり後となるのであった。


「ドラゴンきれーに消えて、まりょくもきれーになくなったので、かえりまーーー!!」


 こうしてなけなしの魔力でふらふらしながら、

 もしものときの魔力回復ポーションを使うか使わないか迷いながら、

 アルドライドの方へと帰って行ったのであった。


「んー、お空にきゅーけーできる、きっさてんはありませんかーーー?」


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「……という事でミスト、混乱は当初予定の二か所ではなく三か所になった」

「凄いですね、ていうかなぜゴーレム落下地点は帝都と第三都市なんですか? 第二都市は」

「位置関係だな、あのゴーレムは人の多い場所に向かって進む、よって順番に効率よく進ませるため……」

「あーなるほど、だから国境近くにある第二都市は最後なんですね」


 暴れさせるのは帝国内だけにしておきたい。


「そして最後、国境から出そうになった所でベルベットが回収するのだが」

「同時に出るような事があれば、片方は僕が行くんですよね」

「その時は私の馬に乗って貰う」


 その頃にはもう、帝国は焼野原かな。


「一般の帝国民がどれだけ逃げてくるかですね」

「今のところは帝国中央と最奥の部分だけがパニックになっているため、

 人が国境からあふれ出て来るような事はない、今のところはな」

「敵兵は」「引いたようだ、こちらの作戦通りだな」


 良かったー。


「あっ、心配事がいくつか」

「何だ言ってみろ」

「はい、最初にまず、中立のはずの冒険者ギルドは大丈夫なんでしょうか」


 とはいっても職員はほとんど帝国民だろうけど。


「冒険者を守るために、一応、匿名で忠告は行っているはずだ、

 そしてその信憑性についても全世界のギルド組合長に非公式で話は通してあると聞いた」

「んー、ばれてないでしょうかね、あと、ちゃんと従ってくれたかどうか」

「どのみち戦争を起こしそうと言う情報はこちらでもわかるくらいだったからな、そこまで不自然ではない」


 ならいっか。


「あと、火山壊しちゃって溶岩が流れ出てるんですよね、

 それがゴーレムを呑みこんで覆いつくしたりしないかが心配です」

「おそらく大丈夫だ、まずゴーレムは人の生命に反応して動く、

 自ら溶岩に突っ込んで行ったりはしない、流れて来る溶岩もそれほど速くはないはずだ」

「なるほど、じゃあそのままにして良いんですね」


 でも逆に、溶岩と混ざったら今度はマグマゴーレムとかになっちゃったりして。


「ええっと、最後に聞きたいんですが」

「どうした」

「ベルベットちゃんは大丈夫ですか?」


 なぜかため息をつくリア先生。


「疲れて熟睡中だ、魔力回復ポーションは使わなかったらしい」

「ひええ、凄いですね」

「まさに倒れ込むように戻ってきた、寝かせておいてやれ」


 よかったよかった。


「じゃあ後はもう……」

「ミスト……これはやはり細かい事かも知れないが」

「はい、なんでしょう」


 わしっと僕の頭を掴まれた。


「ベルベットの事は、最初の心配事にしろ」

「は、はいぃぃぃ……」


 こういう所が僕のだめな所らしい

  だめ貴族だもの。 ミスト


(ベルベットちゃんに何かご褒美を考えてあげないとなぁ……)


 僕があげられるもの、何が良いかな、

 うーーん、あれかな?でもあれはまだ8歳だし……

 あっ、でも別のあれなら! よし、今度相談してみよう、あのお方に。

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