第301話 あらためてのおもてなし
「アルドライド王国フォレチトン領より、ミスト=ポークレット侯爵様のご来場です!」
男の衛兵が野太い声を上げると扉が開き、
パーティー会場は割れんばかりの拍手で迎え入れてくれる。
(うん、これが歓迎というものだ)
ムスタ城でまったく歓迎されていない不気味な迎え入れのやり直し、
ただ当時の女帝ミラー配下は誰ひとり居ない総とっかえ、もちろんメイドも。
(メイド服だけは一緒なんだよな、逆にそれがやり直しになるか)
あの時とまったく同じメンバー、
僕らが進むと玉座で待ち構えてくれていたのは
ついさっき会ったばかりのエクトル様だ。
「よくぞいらしてくれた、ムスタを、ナスタンを救ってくれた救世主よ!
我々は無条件で心から歓迎、大歓迎する、さあ、共に和平の文章を記そう」
別にナスタンはすでにアルドライドとメランによる共同統治なのだが、
ムスタをミストシティの姉妹都市にしたいらしい、兄弟じゃ駄目なのか。
(文章はソフィーさんベルルちゃんで検閲済みだよ!)
名前をすらすら書いたらみんなに見せるエクトル様、
身分的には公爵みたいだな、文章にムスタ領主エクトル公爵って書いてある。
「さあ、それでは宴の席だ、これからの新しく始まるナスタンを、盛大に祝おうではないか!」
物凄くはっちゃけているエクトル様、
きっと今まで地下で悲惨な扱いを受けていたんだろうなあ、
この城では男は老人以外は人権無さそうだったから、ちゃんと自治できるのかどうか。
(人の事、まったく言えないけれども!)
あっ、他のテーブルにはゴスタのジョベール公爵も居る!
いやいやゴスタ城を空にしてもいいのか、転移テントがあるとはいえ。
(……それだけ平和になった、という事にしておこう)
一番豪華なテーブルが用意されていて座る、
前回居なかったメイド隊はすでに先に、隣のテーブルで着席しているよ!
あとアルドライドの王都やメラン、砂漠の国からこっちへ来てるお偉いさんも招かれて座っている。
「ミストくん、本当の意味で歓迎されて良かったですね」
「何やら後でミスト様に特別なプレゼントがあるそうですわ」
「へー、何だろう」
「ミスト、今回は期待して良さそうだぞ」
前に来た時、女帝ミラーが座っていた、
宝石が散りばめられた椅子かな?
さすがにあれは趣味が悪くて僕は座りたくないけれども。
(あ、料理が運ばれてきた)
うっすら見た記憶がある前回のパーティーというか、
僕らの晒し上げ大会、あの時に隣室で用意されていた美味しそうな料理、
おそらく同じメニューだと思う、レシピでも残っていたのだろうか。
「ミストくん、このあたりの地方は山菜とキノコ、肉はジャイアントベアーの肉が特産らしいです」
「ですわ、当地の薬草と煮込む事でベアー肉がやわらかく、良い匂いで美味になるそうですわ」
「ミスト、ステーキも良いが肉の煮込みもなかなか美味しそうだぞ」
「はい、いただきます」
サラダ、スープをいただいてからベアー肉を味わう、
うーんデリシャス、こうこう、こういうのもいいんだよ。
(フォレチトンで飼育して、こっちの特産品に加えたいくらいだ)
とまあ食事が落ち着いてからデザートタイム、
ゼリー系が中心だけれど果物もそこそこ充実している、
ベルルちゃんはケーキ系が無くってちょっと不機嫌? だけれども。
「ミスト=ポークレット侯爵」
「あっはい、エクトル公爵様! 素晴らしい料理、ありがとうございます」
「私もマトモな料理を食べられるようになったのは君たちのおかげだよ、感謝する」
ちょっと痛々しいな、
でもこれからちゃんとした幸せになって欲しい。
「あ、それでエクトル様、新しい奥様を迎え入れる予定は」
「ああもう聞いたかね? オプラス国王の長女か次女を迎え入れるつもりだ」
「そ、そうだったんですか、それは良かった」
ついでに三女も、とか言いたくなったけど、
あれはもう某肉がとりあえず引き取ってくれたんだっけ。
「それで明日、近くのダンジョンを攻略してくれるそうだね」
「あっはい、頑張ります」
「期待しているよ、私も若ければ討伐に参加したかったがねえ、はっはっは」
よく見るとまだ首輪の痕が残っている、少し痛々しい。
(幸せになってくれると、いいな)
宿泊する部屋はかつての姫の部屋、
例の黒メイド、長女の部屋を改修したものらしい、
部屋にお風呂までついていてさすが元女帝の後継者だ。
「ふぅ~、やっとこの城でまともな歓迎をして貰えたね」
「ミストくんがこの国を平和にしたからですよ」
「悪は滅びましたわ、ミスト様の銅像を建てていただいても構わない程ですわあ」
そう言われてもなあ……
僕がここでした事って囮以外の何物でもないし。
全裸劇も結局やらせてもらえなかったし、珍劇だっけ、前回も今回も。
「ミスト、城からの届け物だぞ」
何やら布に包まれた物がいっぱい来た、
受け取って持ってきてくれたリア先生が大変そうだ。
「何だろうこれ、早速開けますね」
広げて見るとそこには……!!
「うおっ、かっこいい服だ!」
「素敵ですね、これならミストくんが侯爵として恥ずかしくない服です」
「こちらはダンスにも最適な服ですわ、素材が素晴らしいですわ」
「ふむ、色々と様々な用途別に取り揃えられているな」
この国にも、いやこの城にもこういうのあったのか、
というより城主が代わってこういうのが必要になったって感じかな、
何はともあれ、前回ここへ来た時に用意されるべき物が今、ちゃんと来た。
(うん、料理も食べたし服も貰った、悪い女もみんな滅びた、あとはダンジョン攻略だけだ)
「ええっと、服はアイテム袋に、いやとりあえずそこのタンスに入れておきましょうか」
と開けるとそこには……!!
「あっ」
「どうしましたミストくん?」
「あら、前の住人の下着が残っていますわ」
うわー、うわー、うわー
「ミスト、どうする」
「ちゅ、中古ですよね、それをみんなに着せるのは、ちょっと」
でも、あの黒メイドのコレクションかぁ。
「では廃棄します、ミストくん、いいですね?」
「あっはい」
「ミスト様、よろしいですわ?」
「あっ、はい」
「ミスト、捨てるぞ」「あっ……はい」
心の奥ではもったいないと思ってしまう
だめ貴族だもの。 ミスト
(まあ、呪いの下着かも知れないし! ってそれ履くとどうなるの?!)
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