第300話 運命のお時間です!
地下牢の奥、まさに処刑場といった場所に、
首から上が麻袋で被されている女性が座らされている。
「ええっと、この方々は」
「魔女です、正確には女帝ミラー配下の魔法使いです」
「あっ、道中に襲ってきた、空飛ぶおばさん?!」
あの下着がえげつないくらいエロかった!
「いえ、あの三人は魔力が非常に高かったので実験材料に」
「ざ、材料って」
「この二人はここムスタで以前から、男性奴隷を虐殺していたような悪い女です」
とはいっても顔が見えない、いや見たくないけれど。
ベルルちゃんが杖で麻袋を被された頭をコツコツ叩く。
「それで先日手に入れた『生命の指輪』を呑ませたのですわ」
「あーうん、これで殺せば『輝く生命の指輪』になるんだったよね」
それをはめていると死んでも復活するっていう、
ソフィーさんとベルルちゃんに以前プレゼントしたやつだ。
(あの時はリア先生がお膳立てしてくれたけど、今回は……)
「ミストくん、ひとつはミストくん用で、もうひとつはリアさん用です」
「さあミスト様、早くアイテムを完成させてしまいますわ」
ベルルちゃんが魔法で恐ろしく斬れそうな光の剣を出し、
僕へ丁寧に渡してくれる、これでさっさとやれという事か。
「うーーーーん」
「どうしました? このアイテムの重要性はご存じですよね?」
「ミスト様にプレゼントしていただいた時は嬉しかったですわあ、さあ」
やはり物凄く躊躇してしまう、そりゃそうだ、
単なるへっぽこ貴族の僕が直接、手を下すだなんて……
(そりゃあ侯爵ともなれば当然なんだろうけれども!)
「その、ここはやらなきゃいけない所?」
「ミストくん、どういう事でしょうか」
「ええっと、あっ、まずこの女性、本当に罪人?」
まずありえないと思うけれど、
殺させておいて後で実は知ってる人でした、
みたいなタチの悪い話を学院で拾った小説で読んだ。
「では顔を見ていただきましょう」
ソフィーさんの指示で顔の麻袋を外すキリィさんモリィさん、
片方は物凄く気が強そうでもう片方は物凄くやさしそう、あ、目が合った!
(睨まれてるのと、懇願されてる)
口は猿轡というやつか。
「ミスト様、相当タチの悪い悪女だそうですわ」
「う、うん、そう言うのであれば、そうなのだろうね」
「何ならミストくん、尋問してみますか?」
いや、逆にこれで斬り辛くなったかもしれない。
「最後にお水飲ませてあげて」
「ミストくん優しいのね、でも指輪を吐き出されるかもしれませんよ?」
「あっそうか、確かにね」
再び麻袋が被せられた、
さあさあ、さてどうしようか。
「それで、どっちが僕用でどっちがリア先生用?」
「ええっとミストくん、その区別は、必要ですか?」
「だ、だってその、指輪のプレゼントでしょ、だったら僕は貰う側なんだから、その」
いや婚約指輪だったら用意するのは僕のも僕でいいのかな、
自分の分は自分で用意しろって物なのかどうかそもそもわからない。
「つまりミストくんは、自分の貰う婚約指輪は婚約者に用意して貰いたいと」
「そ、そうなりますね、それがスジかなあって、正式には、知らないけれど」
「ではミストくんが喜んでいただけるのでしたら」
と、ソフィーさんが杖を構えたと思ったら、
即座に、まさに瞬時に光の槍がキツい顔の方の女を貫いた!
脳天から容赦なく真っ直ぐに……そして光の塵となり、指輪だけが残った。
(きらきらしている、これで完成だぁ)
「ミスト様、ミスト様にお渡した剣も、同じようにすぐ相手を消しますわ」
「う、うん、あんなに綺麗に処刑できちゃうんだ」
服も、下着すら残らないなんて。
「この指輪はミストくんへの私達からのプレゼントです!」
「あ、ありがとう」
「さあミスト様、リア先生へのプレゼントを完成させて下さいまし」
剣を構える、
さっきの凄く優しそうな人が本当に悪女なんだろうか、
いや実際そうだからこうして処刑されるはずなのだから……
「うーーー……」
剣を持つ手がガクガク震える、
変な汗が出て、足までも震えてきた!
斬るだけ、ズシャッと一振り、構えて振り下ろすだけなのにっ……!!
「ミストくん、さあ」
「ミスト様、今ですわ!」
「う、ううっ、では、では……!!」
僕は剣を……剣を!!
「駄目だああああ!!!」
剣をキリィさんに渡した!
「ええっと領主命令です、キリィさん、お願いします」
「はあ」
や、やめて、その声、わざと傷付くような声、出さないで!!
「ミストくん、どういうことですか?」
「いいんだ、僕は『殺さずの領主』を目指すんだ、直接人は下さない、
誰ひとり、自分の手で人を殺した事のない領主として、歴史に名を刻むんだ」
「ミスト様、それって逃げる言い訳ですわ?」
もうそれでいいや。
「でもやっぱり僕は、いかに偉い領主であったとしても、
人を処刑する必要にあっても、直接はやれない、いや、やらない」
「それはこの私が目の前で敵に、斬られそうになってもですか?」
「いやいやそんな事、起きないでしょう! それだけ皆さんを信頼します」
ソフィーさんとベルルちゃんが顔を合わせて何とも言えない表情だ。
「ミスト様、本当にそれでよろしいのですわ?」
「はい、命令だけ下します、キリィさん、願いします、領主命令です」
「畏まりました」
スッ、と綺麗に一振りすると、
斜めに斬られた死刑囚が光の塵となって、また輝く指輪だけを残した。
「ありがとう、キリィさん」
「いえ、ご命令ですから」
「ええっと、僕はだめ貴族です、だめ勇者です、それが何か?」
開き直るしかできない
だめ貴族で何が悪い! ミスト
「ミストくん」
「はい」
「ミスト様」
「はい」
さあ、どんな冷たい言葉が、辛辣な言葉が浴びせられるか……?!
「行きましょう」「行きますわ」
「……はいっ、ごめんなさい」
うん、この反応が、一番キツいかも知れない。
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