第254話 メランで王妃様の治療をしました

 転移テントで移動すると武骨なイメージのお城、

 これって兵士の練習場かな、その使われてない一角っぽい、

 夜遅いから誰もいなくて寂しい、松明の炎が点々と。


「さあ、こちらだ」


 段々と衛兵の姿が見え敬礼している、

 それが徐々に増え、城の入り口に到着した、ってこれ裏口か。


「今はあくまでも、個人としての頼みで来て貰っている、それは覚えておいて欲しい」

「は、はいっ、メラン国王陛下も色々とお立場がおありなのですね」

「すまない、極端に言えば今は、国王として見ないで欲しいくらいだ」


 そんな会話をしつつ階段を駆け上がっていく、

 本当なら末端の兵士がやるような先導をわざわざしてくれているあたり、

 一瞬でも早く治療をして欲しいと思っているのだろう。


(アルドライド国王の長話が原因で間に合わなかったとか嫌だぞ)


 そう思って到着した豪華な部屋には、意外な人物が居た。


「アンジ姉さん」「ビアンカお姉様!」


 元盲目で魔力がソフィーさんベルルちゃんと遜色ない聖女、

 僕の義理の姉になるおふたりが痩せ細った女性にずっと治癒魔法をかけていた。


(あー、これなら多少待たせても平気だったのか)


 メラン国王がその女性のか細い手をきゅっと握る。


「ターレイ、もう大丈夫だ、今から治療に入る」

「あぁ……ぁなた……」

「それでは眠らせますね」


 アンジさんの言葉と同時に強い光魔法が包み込み、

 手を握られたまま深い深い眠りに入ったようだ、

 そのベッド横の床にどかりどかりと特製アイテム袋をいくつか置いたのは、

 僕が勝手にメラン国王の元教育係と決めつけている老戦士だ。


(後から来たこのいかつい爺さん、亜人だけどドワーフっぽい)


「ジタフすまない」

「坊ちゃん、出しますぞ」


 うん、寝込んでいる王妃様と同じような年齢の女兵士が四人、

 さらにベルルちゃんキリィさんが自分の特製アイテム袋から三人づつ出した。


(十人はさすがに多いな)


 ちょっとぎゅうぎゅう、

 みんな縛られてたり片腕や片足が斬りおとされてるのまでいる。


「んー、これかこれですね」

「こちらも良いですわ、でも腎臓の方が少し弱いですわね」

「同じ女性でまとめた方が良くて?」

「馴染めば同じでしたら、こちらの方からの肝臓が」


 聖女四人が色々と品定めというか人定めしている、

 魔力で体内の様子を調べているようで会話的には、

 それぞれの内臓を見て一人から取るか複数から取るかって感じか。


(あ、雰囲気で勘付いたのか何人か怯えている)


 でも僕らを本気で殺そうとしてきた相手、

 すなわち返り討ちで死んでいるべき女性たちだ、

 いかに命令や職務、軍務とはいえそれ相応の覚悟はあってしかるべきというか。


「ではこの死体からは心臓と腎臓を、こちらからは肝臓と膵臓を」

「メラン国王様、他に治療が必要な部分はおありで?」

「細かい事を言いだしたらきりがないが、とりあえずはそれで頼んだ」


 使うのは女剣士とメイドか、

 服を破りはじめたので目を背ける。


「ミストくんはそうね、こちらに座って手だけ出して」

「あっはい」

「わたくしとソフィーお姉様に振れているだけで良いですわ」


 すでにヨンスタで経験済みとはいえ、

 臓器の入れ替えをこの目で見るのはやはり酷だ、

 僕は天井を見たり目を瞑ったりして治療を、手術をやり過ごすのであった。


(残りの『生きた死体』はどうすんだろう)



「……終わったわ、ミストくん、もう平気よ」

「は、はい、あっ、すみません」


 王妃様の裸を見てしまった!


「おお、ターレイ! もうこれで安心なのだな?」

「はいですわ、安静にすればすぐ馴染みますわ」


 ベルルちゃんが光魔法を発動すると意識を取り戻す王妃様。


「ぁ……ぁなた」

「治ったぞ、アルドライドの聖女が治してくれたぞ!」

「ぅ……うれしぃ……」


 うん、感動の場面だ、

 片づけを終えてふたりきりにし部屋を出る、

 爺さん戦士もめっちゃ泣いてる。


「ええっと、今は国王として思うなって言ってたから、すぐ出ないと駄目かなぁ」


 と言った直後、僕のお腹がぐぅ~~~っと鳴った。


「ミストくん!」

「ご、ごめんなさい、昼も夜も食べてないから」

「携帯食をお持ちのはずですわよ?」

「えっ、そんなの貰ってたっけ」


 そういえばムスタに入る前の段階でなんやかや渡されて、

 あーでも僕のアイテム袋って誰かに渡したままで、あれ?


「食事くらい普通に出るじゃろう、しばし待たれよ」


 老戦士がどっかへ頼みに行ってくれた。


「ミストくん、ご馳走してもらえるようよ」

「甘い物が出るか楽しみですわ」

「う、うん、お姉さま方も是非、一緒に」


 こうして僕らは夕食をいただいたのだったが、

 間を持たせたいのかお礼のつもりなのか知らないが、

 老戦士からずっと衛兵隊長だった頃の武勇伝を聞かされた。


(ん~、ジタフさんって言ったっけ、話が長いしうるさい)


 思っていても言えない

  だめ貴族だもの。 ミスト


「ジタフさんもご一緒にお食事をいかが?」

「おおすまない、熱弁で丁度、腹が減った所だったわい」


 ソフィーさん、ナーイス!

 城のメイドさんが空いている席に促してくれた。


「それでな、ルゾンドの丘での戦いは……んしゃむしゃ」


(喋りながら喰うんかーーーい!!)


 これにはみんな苦笑いである。


(あ、料理の味はまあ、なんていうか、普通よりは良いけど量重視だなこれ)

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