第57話
――そして、決戦当日。
ステージの下には百人近くの生徒たちが、因縁の対決を一目見ようと集まっていた。
「……ふみ香、もう少し賢い子だと思っていたんだけどね。逃げずにここまで来た度胸だけは認めてあげるよ」
ステージの上、黒のスーツに身を包んだ美里
「……ん?」
そこで桂太は異変に気づいて、将棋盤をじっと睨んでいる。
ステージ中央に置かれたのは、持ち運びに適したマグネット将棋盤だった。
「……何のつもりだ、ふみ香?」
「別に。大した意味はないよ。それともAI様はこんな安い将棋盤では実力を発揮できないかしら?」
「……あまり兄を舐めるなよ。大勢の前で赤っ恥かかせてやる。そして、次は
――こうして、決戦の火蓋は切って落とされた。
〇 〇 〇
対局の結果、僅か二十三手で美里ふみ香が将棋AI『六角レンチ』を撃破。
将棋部とパソコン部の因縁の対決は、将棋部に軍配が上がった。
「……そんな馬鹿なッ!?」
桂太は将棋盤の前で呆然としている。
――
それは、『音楽室殺人事件』のトリックで犯人が使用したネオジム磁石だった。
ふみ香は自陣の飛車の駒にだけネオジム磁石を仕込み、王手飛車取りを誘った。
「パソコン部側に持ち時間がないのなら、1分以内に駒をとれないよう強力な磁石で固定して時間切れ負けにしてやればいい。見たところ、ロボットアームにそこまでのパワーや器用さはなさそうだったからね」
「……き、汚いぞ、ふみ香!! この卑怯者め!! 正々堂々勝負しろ!!」
「おんやァ? 実力で勝てないからってAIに
「……ぐぬぬ」
「……兄さん、正直こんなやり方で勝っても私は嬉しくも何ともない。だったら別に勝てなくてもいいじゃん。将棋が好きで、楽しいのなら多分それで充分なんだよ」
「…………参った。俺の負けだ」
桂太は肩を落とし、敗北を宣言した。
「大変だッ!!」
そのとき、将棋部部長の六角
「六角部長、こんなときにどこ行ってたんですか?」
「そんなことはどうでもいい。それより、校舎で次々に妙な事件が起きているんだ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます