グラウンドの中心で断末魔を叫ぶ

第24話

 五限の現国の授業中、美里みさとふみは何気なく窓の外を眺めていた。この時間、グラウンドは使われておらず、スプリンクラーで水が撒かれていた。ここのところずっと雨が降っておらず、窓を開けているとグラウンドの渇いた砂が教室に入ってきていたので、その為だろう。


 ――そこへ、一人の男子生徒が現れる。

 にわとり鶏冠とさかのような真っ赤なモヒカンに、長く青い襟足えりあし。改造された長ランにボンタンを履いた、誰がどう見てもヤンキーとしか見えない風貌。

 男子生徒はグラウンドの中央までゆっくり歩いたかと思うと、ポケットから煙草を取り出す。


 ふみ香は自分の目を疑った。

 まさか、こんなところで喫煙する気か?

 そんなことをしたら停学で済むとは思えない。他の生徒たちへの影響も考えれば、退学処分にされてもおかしくない。


 ――一体何を考えているのか?


 モヒカンの男子生徒はそんなふみ香の心配を余所よそに、ジッポーライターで煙草に火をつけると、美味そうに煙を吸い込み、吐き出した。


「……どうした美里?」


 ふみ香が窓の外の様子に釘付けになっていることに気が付いた国語教師・斉藤さいとう明世あきよが、つられて窓からグラウンドを見下ろした。


 ――そのとき。

 モヒカンの男子生徒がくわえていた煙草が突然、大きく燃え上がった。男子生徒は顔面を焼かれ、地面でのたうち回っている。


「……た、大変だッ!! 救急車!!」


 教室中が一気に騒然とする。


 ――一体何が起きたのだ!?


 グラウンドには男子生徒一人しかいなかった。それなのに、何故煙草が火を噴いたのか?


 これは事故なのか?

 それとも、殺人事件なのだろうか?


 ふみ香は嫌な胸騒ぎがした。

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