第10話
ステラと部屋を出た瞬間多くの視線が一斉に俺に集まると思わず後退りしそうになった。
(さっき一般人は追い出したと聞いていたから安心してたけど冒険者ってこんなにいたんだ……)
「あれが噂の美少女か……確かに可愛いな」
「いや綺麗といった方が正しいな」
「う、美しい……」
「ヒュー! 噂以上じゃねえか!」
「本当に綺麗な子……うちのパーティに誘いましょうよ」
あまりの人の多さに固まっているとステラが「エレナお姉ちゃん人気者だね!」と笑顔で俺を見ている。
(……ひとまず宿屋に行こう)
注目の中そそくさとステラの手を取りギルドを出て行った。
外では出待ちの住民達に出会すと、また人の間を縫うように急いで宿屋に入って行った。
『はあはあ! な、何だこの光景は⁉︎』
あまりの人だかりに疲れてしまうとこれからの先行きが不安になる。
(まさか俺の顔にここまでの破壊力があるとは……そういえば女神様すごく張り切ってたもんなぁ……)
「宿屋ロールへようこそ!」
受付には女性が元気で弾んだ声を響かせて俺達を迎えた。
『あの、この子と10日程泊まりたいのですが』
「おふたりで10日ですね! 前金で2000ラナです!」
初めての金銭のやり取りに少し緊張しながら袋から貨幣を取り出す。
(えーとこれが1000ラナの金貨だよな)
冒険者ギルドから出る前に貨幣の事を職員らしき人に聞いていた俺は金貨を2枚置いた。
女性は嬉しそうに「有難う御座います!」と笑顔を見せた。
「部屋まで案内しますね!」
案内された部屋に入ると精神的に疲れていたのでベッドに寝転んで一息つく。
『ステラ〜少し休も! 疲れちゃったよ〜』
そう言うとステラも寝転んでくる。
(まずは買い物だよな2人の服と日用品に食材も気になるしギルドの登録もしたいな)
次々と出てくるやる事の多さにゲンナリした。それは街の人の視線を受けながらしなくてはいけないという精神的に辛いものからくる事で中々体が行動をしようとしない。
『ステラ? ここにしばらくいようか、もしかしたらステラを知っている人がいるかもしれないし』
「うん」
そう言うとステラはゴロゴロとベッドの上を回って俺に抱きつき笑顔を見せた。
「わたしエレナお姉ちゃんがそばに居てくれるから寂しくないよ」
その言葉が嬉しくてステラの頭を撫でた。
『ステラのお父さんとお母さんが見つかるまでずっと一緒にいるから安心して甘えてな』
「うん!」
少しベッドに横になってからステラを連れて宿屋を出て行った。
(ほんと広いなこの街……誰かに案内してほしいくらいだ。何処かにマップでもないかな?)
相変わらず注目の的だが疲れるだけだと気にしない方向でいくと心に決めていた。
(お! あの店武器や防具が飾られてる!)
俺は魔物との戦闘には丸腰でマナを頼りに戦っていた。だからお金がある今装備を揃えた方がいいと思っていた所ちょうどいいタイミングで姿を現した店に入って行った。
店に入ると短剣、大剣、弓矢、槍など色々な武器や防具類が並んでいる。
(さて、俺はどうすればいいんだ? 剣なんて使った事ないし弓矢とか槍何て教えて貰わないとまず無理だし……)
途方に暮れていたがとりあえず護身用にナイフでも買おうと移動した。
ナイフが並んでいる棚を見るがどれがいいかサッパリ分からない。
悩んでいると店員らしき立派な髭をした中年の大きな男が痺れを切らしたのか声を掛けてくる。
「お嬢ちゃんどういう武器をお探しかい?」
『えーと護身用の武器を探していて』
「それだとこの辺りのナイフがいいな」
おじさんはサイズが少し小さいものを3本並べてくれた。
『いっぱい種類があってどれがいいのかわからないんですよね』
「そうだな……値段で決まるのは使われている素材くらいによるもので切れ味と耐久性の違いだ」
(まあ特別な効果が無いなら悩まなくていいか。1番高いので2万ラナか、これでいいかな)
『これください』
3つのナイフから一番高い物を選んだ。
「お! 毎度」
買うと思っていなかったのかおじさんは満面の笑みでカウンターにナイフを持っていく。
『あの、マナ使いの人ってどんな装備をしているんですか?』
気になっていた事をお金を払う時に聞いてみる事にした。
「そうだなこの店の3件隣りにマナ使いの装備が売っているぞ、そこで聞いてみな」
お礼を言うと早速そのお店に向かった。
武器屋のおじさんに言われた店に入ると年配の女性がカウンターに座って本を読んでいた。
「おや? いらっしゃい」
俺達が入ってくるのを見て顔を上げる。
『お邪魔します』
「この店にお客さんが来るのも久しぶりじゃのう」
お婆さんはシワをクシャクシャにした笑顔で迎えてくれた。
(マナ使いの事を知らないからどこかで教えて貰おうと思っていた所なんだよね。このお婆さんもきっとマナ使いだと思うし色々聞いてみたいな……)
『すいません、最近マナを使えるのに気づいたんで色々分からない事が多いいんです』
そう切り出すとお婆さんは俺を不思議そうな顔で見ながら首を傾げた。
「この国ではマナの事は授業で習うはずじゃが?」
『他の大陸から来たんで教わってないんです』
俺は困ったら他の大陸から来たと言えば何とかなるだろうと思いそう言ったがお婆さんは驚いた顔をしている。
「ほぉー! それはすごいのう! 余程運が良かったんじゃな」
(凄い驚いてるけど船で大陸を渡るのって意外と珍しいのかな?)
「まあ客もいないしな、何を知りたいんじゃ?」
『マナ使いの人はどんな装備を持っているんですか? 武器とか防具とか』
「基本的にここの大陸のマナ使いは武器を使わないがマナの威力を上げる杖を使っておる。しかしそれは高価で効果も大きいものから小さいものまで様々じゃ、だから持ってない者もおるな。だが手ぶらだと接近された時に不利になるから何かしら武器を持っているかの」
「それはここにあるんですか?」
「残念じゃが高価すぎて街には無くてのう、商会か冒険者ギルドを通さないと手に入らないのじゃ」
(そうなんだ、まあ高いみたいだしいいか)
今までも何とかなってたし本格的に魔物と戦う冒険者になるつもりはなかった俺は高価と聞いてやめようと決めた。
「最近では剣と合わせて使う者もおるが体力とマナ両方を使うとなるとすぐにスタミナ切れを起こすから臨機応変に使い分けしている者が大抵じゃな」
「防具に関してじゃが戦闘でマナを使う時というのはどうしても隙ができるのはわかるな?」
確かにマナを使う時は溜めであったりマナを変化するイメージをしたり強力だけど隙が多い。
「だから重い装備は相手の接近を許す事になる。誰かとパーティを組めばそれもある程度緩和できるがの」
(なるほどねぇ、でもマナを纏えば大丈夫そうだけどな)
「だからマナ使いは軽装備が主流じゃな、この店にある装備は特殊でなマナを使い防御性能を上げる事ができるんじゃ」
(流石マナ使い専用の店だ、マナを纏えば更に硬くなるな)
「他にも沢山あるぞ、ここにはマナ使いでないと動かない道具や防具を揃えているから後でよく見て行くがええ」
(便利な道具か、非常に気になるから後で見てみよう)
『あとマナの結晶石について何ですがどう使うのですか?』
洞窟で手に入れた虹色の結晶石をを自分用に使おうとしてたので使い方を聞いた。
「マナの結晶石はただ持っていても効果はなくてな、それにマナを流さないといかんのじゃ、だから身につけていつでもマナを流せるのが理想じゃな」
『分かりました。色々とありがとうございます』
話が終わると周りにある道具や防具を物色していった……。
「お前さんどこかの貴族様か王族のものだったりするのかい?」
目の前に積まれた多くの商品にお婆さんは驚いて俺を見た。
(あれから色々道具を見ていたら欲しくなって気付いたらこんな事になっていた……)
防具は白に近い色をした白銀のマントと白を基調とした水色のリボンが付いた薄手のジャケットに淡い水色のスカートの見た目がおしゃれな高校生の学生服に見えるものを買った。
実は服に関してはあの家に5着しか無かった。それも森での戦闘を繰り返すうちに痛んでいて困っていたのだ。
(やっぱり見た目は大事だよね)
俺は見た目重視で好みのデザインを選んでいたが見た目に反してマナを全身に纏えば防御力がかなり上がるらしい。
その他には便利道具が沢山あった。道具を動かすにはマナが必要らしい、前の世界でいう電気の様なものだろう。
この街にはそんな道具を作る変わり者がいるらしく貴重なマナをこんな事に使う者がいないとお婆さんは呆れていた。その人とは付き合いが長い関係でここに置いてあげているらしい。
全て特注品で使える者が少ないのもあってか全体的に高い値段だった。
(合計100万ラナくらい使ってしまった! よくよく考えるとそりゃ驚くわ!)
支払いを終えるとお婆さんに話しかけた。
『あの、またマナの事を教えて下さい』
「お客は全然来ないからいつでも来るがええ、いい暇つぶしになるしの」
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