第16話 襲撃
王宮騎士団の様子がおかしい。
騎士たちはまるで呪われた石像のようにその殺意に満ちた両眼をこちらに向けている。そして一斉に抜剣。
一部の王宮騎士は同僚の雰囲気が変わったことに戸惑い慌てて抜剣をする。おい、どうした?と声をかけても殺意の眼を持つ騎士達は反応しない。声をかけた騎士の表情が険しくなる。
入り口から大きな音が聞こえた。
「隊長っ! 申し訳ありません。入り口に透明な壁がっ!」
ホールの外にいた複数の法王騎士が何もない入り口に何度もタックルを食らわせいる。透明な堅い壁のようなものが騎士団の進入を阻んでいた。それを見てお母さんは舌打ちをする。
「結界か。
……やられたな」
ふぃーと息を吐き出して偽魔王は呟く。
「ちょっとー、いったい王宮騎士団はどうなってるの?
人間の不穏分子がいると思えば、
今度は魔族が紛れ込んでいるんなんて」
「法王騎士団のわたしに聞かれても困ります。
……極秘扱いで進めておいてこのザマか。
色々甘いんでしょうね」
エミリカ叔母さんとお母さんは周囲に注意を払いながら互いの距離を近づけていく。
「魔王様、
相手はかなりの手練れ。油断なされるな」
オリジお坊はエミリカ叔母さんのすぐ横に立ち、そっと片手剣を二本渡した。オリジさん、エミリカ叔母を「魔王様」って呼んじゃたよ……。
「……判ってるわよ。
魔王の座は前魔王を倒したものに渡される。
こいつら全員魔王候補だわ……」
エミリカ叔母さんが呟く。
そして両手にもった剣にブンと音を立てて魔力を通し、刃先を下向きにして構える。
「こんなに近くにいたのに気づかなかったのかよ」
偽魔王は頭部をすっぽり覆う黒色の箱をコツコツと叩きながらぼやく。
「……反省してる」
黒いドレスをひるがえすエミリカ叔母の頭部にはいつの間にか巻いた黒い角が二本生えていた。
対する王宮騎士だった者達は自らの身体を巨大化させて、身体を覆っていた金属製の鎧を引きちぎった。
そのおぞましい姿を見てわたしは一瞬だけ意識が飛んだ。ただ怖かった。
「ギル兄ぃ、エミリカの助太刀をしないのか?」
「言われなくてもやるさ」
お父さんが偽魔王の背中に声をかけると、偽魔王は自分の頭部を覆っている黒色の箱を割り砕いた。その中から現れたのは見慣れた顔だった。このホールにそびえ立つ勇者の像のものとそっくりだった。
おいおい……。
×勇者は魔王との決戦でその命を落としました。
○勇者は魔王として王宮に幽閉されていました。
また歴史記述が大きな変動を受けたような気もする。
なんかもういいや。
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