第15話 無かったことにしよう ←無理でした
「魔王様もエミリカさんも積もる話もあるかもしれませんが……それはまた後の機会と言うことで。
さっ、魔王様。勇者の像はあちらでございます」
お父さんが「魔王と呼ばれた何者か」に対して、にこやかな笑顔のまま勇者の像を再度指し示す。
反応のない、というか呆れたような態度の「魔王と呼ばれた何者か」にほらっほらっと何度も指し示す。
お父さん、全てを無かったことにしようとしている……。
というかこの「魔王と呼ばれた人」って誰なんだろ?
「後の機会って、お前……この後に俺また王宮に戻らないといけないんだけどな」
偽魔王、タメ口である。
「このご時世が微妙なときにおバカなことをしでかしたことを少しは反省しなさい」
対しお父さん、偽魔王にちょっと切れてる。
「いいですか?
今の世界状況は戦中のように人間対魔族のような単純な図式はとうに崩れ去っているんです。
国内は魔王を処刑しなかったことの不満分子が戦後ずっと存在していて。魔王の恐怖を忘れた周辺国からはこの国内の不満分子を援助して国力を削ごうとする不穏な動きが出始めています。
……先ほどの王宮騎士もその一派でしょう。
対して魔族側からも帝国が分割してできた各小国を再び再統一する動きが出ていてその盟主に幽閉されている魔王を立てようとする一派と……」
偽魔王に人差し指をたてて説き聞かせるよう語るお父さん。
そしてその口が止まった。
「法王騎士団! ここにっ!」
お母さんが剣を抜いて王宮騎士団からお父さんの前に庇うように立った。
「やばっ!」
偽魔王は自分を拘束していたロープを軽々と引きちぎると王宮騎士団の前に立ちふさがった。
その大きな背中の後ろにエミリカ叔母さんとわたしがいる。
「……現魔王を亡き者にして、新たに新魔王を立てようとする一派がいるわけです」
お父さんはお母さんに護られ周囲の王宮騎士団からゆっくりと距離をとりながら止めていた言葉を続けた。
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