第10話 真実

 一方、オカルト研究会の面々は二グループが集まった後で東棟の探索を終えて戻ってきた。こちらも人形に追われ逃げ回ってきたという。命からがら逃げてきて助かったと思ったのもつかの間、ここにきて二人の死体と直面しすっかり意気消沈しているようだ。

 部屋の暗いながらも異常なものは一切なく、寝室がいくつかあり厨房を見かけたのみという。おっかなびっくり開けて中を覗いていきつつ何も起きなかったからこそ、奥の部屋の扉を開けてから襲われたのは、たいそう驚いたことだろう。

「奥の部屋? あちらは行き止まりでしたけど。」

「人形は一体だけでふわーっと浮き上がって飛んできたんだ!」

やけに背の高い青年とそれに対して小柄な少女が身振り手振りで説明した。

「なら、あと見ていないのはこのホールか。」と俺は周囲を見渡した。


 手分けして二階部分や他の装飾品を探ってみたが、違和感があったのは肖像画くらいなものだった。ホールの奥にあるそれは寄ると一メートル四方あった。俺は周りの数人に手伝ってもらい持ち上げ、力いっぱいに引っ張るとガコンとした音と一緒に取り外した。肖像画の裏には人一人が辛うじて這って通れる道が続いていた。懐中電灯を手に、俺が確認しに行くことにした。

「もし一時間経っても戻らなければ、その時は追って来てくれ」と周りの全員に告げて、狭い道を奥へと進んでいく。


 蠟燭の灯りかぼんやりとした光が覗いた先に段差があり、少し上ると小さな個室に一人の老人が椅子に腰かけていた。近くに寝台があり、ここだけやけに生活感があった。

「お待ちしておりました、ヨコジロウ様。」

なぜ自分が来るのかわかっていたのかはさておき、聞きたいことがあった。

「何が目的でこんなことをしたんだ?」

「貴方を招聘するためでございます。」

意味が分からなかった。

「なぜ俺を呼びよせるために、こんな大掛かりなことを?」

「カモフラージュとして複数人増やすことを命じましたが、この形にしようとしたのはゴウタ様の発案でございます。」

「ゴウタが?」意外な名前が出て頭に登っていた血が引いた。

「一任したところ、出回っている噂を利用してみてはいかがかと提案なされたので、これに乗ってみた次第でして、ハイ。これほど大勢になるとは想定以上でした。」

「ならなんであいつが死ななきゃならないんだよ!」

「ゴウタ様は使命に殉じていただきましたので、こうする外はなかったのでございます。」

「なんだよ、使命って。」

「貴方様を招き、当主にするための、供物となるわけです。これは参加した方みな、同様でございます。」

「じゃあ、あいつらも、ほかのも…?」

「ハイ。みな出て行っては困るのです。ですが、貴方様がここに残るというならば。」

「わかった、俺は残る。サナエは…彼女に聞いて確かめさせてくれ。」

「本来ならば残ってもらわなくては困るのですが。」

「俺が当主なんだろう? なら決めるのは俺の意向が通るはずだ。」

「オオ! 自覚なされたのですか。嬉しい限りです。なれば花嫁は『次』でも構いませぬゆえ。」

次とは何か気になったが、とりあえずはサナエは外に出せるようだ。

「他のも、いいよな? 俺だけでいいんだろ?」

「しきたりではできませんが、当主の言葉は何より優先されますゆえ。」

「それなら、帰してやってくれ。俺はもう、疲れた。一休みする。」

「畏まりました。新たなる『我らの当主』。」

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