第8話 奥の部屋

 「うーん。ミィちゃーん。」

ピィ、ピィと小さく鳴き声が聞こえる。ハジメは俺達が出てすぐのところに寝ころんでいた。廊下に放置されたままだったようだ。睡眠ガスのようなものだったということか。

「起きて―」とサナエが肩を揺すってもよだれを垂らしながら寝入っている。

「こっちは大変な思いをしたのに、気楽なもんだぜ。」

コイツは何かあると自分だけが苦労したかのように振る舞う、のだがそういうところも視聴者ウケがいいのかもしれない。どこか憎めないのは厭味ったらしさより照れ隠しを感じさせるからだろう。

「それにしてもナゼなんだろうね?」サナエがハジメの頬をつつきながら「なぜわざわざ私たちは閉じ込めたんダロ?」

「この子がかわいそうだからとか?」

「そんな情があるならそもそもこの館に閉じ込めないと思うけど。」

全くその通りだった。彼女にあって俺たちにないものは、鳥籠くらいなものか。

「ミィちゃんが守ってくれたのかもな。」とぞんざいな返答をすると膨れてしまった。そういえば他の面々はどうしているのだろうか。ハジメが漸く目を覚ましたのを確認してから、俺達は奥へ進むことにした。

いくつか部屋があったがホールの近くにしかないようで、進むほど廊下だけのだった。

奥の部屋の扉を開くと、山ほどの人形が折り重なっていた。

「何なのコレ…?」サナエの驚愕は尤もなものだった。

次の瞬間、音を立ててこちらに崩れ、その中の数体が浮きながら向かってくるのを見て俺たちは慌てて引き返した。

「なになになんなの!!」サナエが走りながら喚いている。その前にカメラを構えながら逃げ出したドウジがいる。ハジメは、と思い振り返ったら足が遅かった。

「ハァ…ハァ…待ってくれ。ハジメ連れてくる。」と俺がいうと「りょ」と答えた。

追ってくる様子はあるが、ハジメよりは遅いようだった。だが体力もなさそうでスピードはさらに落ちていた。

「おい、大丈夫か?」と声を掛けると「私より、ミィちゃんを…。」とアホなことを言い出した。仕方ないのでおんぶすることにしたが、鳥籠が頭に当たって痛い。

「なぁ、鳥籠をもっと上に…そうしておいてくれ。」

走って二人が見えてくると、鍵がかかった行き止まりの扉だった。


扉の前に来てハジメを降ろし、壊す勢いで扉に体当たりをするとギィと開き、呆気ない手応えで止まり切れずにたたらを踏んだ。その先のホールでは、二人が血を流して倒れていた。

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