第7話 開かない扉

「うん…ここはどこだ?」

辺りは真っ暗闇だった。気が付いたら声がする。サナエとドウジが何やら会話しているようだが、頭に入ってこない。

そういえば先に倒れたはずの彼女はどうなったのか、倒れたままなら探しに行かなくては。

次第に暗闇に目が慣れてきて目にしたのは、沢山のこけしが飾られた部屋だった。

「なんだ…? このこけしの数…」

重い頭を振りかぶりつつ起き上がると、近寄って手を握ってきたサナエの声が響いた。

「良かった! 何ともないよね!? 心配したんだからァ!」

「落ち着いてくれ、何ともないよ。ありがとう。」

ドウジは俺たちの方を横目に見ながら、カメラでこけしを撮っていた。

「えー、今俺たちは閉じ込められた部屋にいまーす。どうやったら出られるのか、これから試していきまーす。」

演技の入った風にしながらも緊迫感を混ぜつつ歩き回る。暗視機能がついているのか、目が慣れたといっても不用意に触りたくないもんだと思うが。

「おっ、鍵はっけーん。これで出ろってことでしょうかー?」

少し興奮気味にドアに近寄ってガチャガチャと鍵穴に突っ込んでいるようだ。しかし合わないのか、長くあれこれと回している。

「開きませ…んね…じゃねーよ開けよ! 開いてくれよ! なんだよ! これなんなんだよ!?」

どうやらため込める不安の容量をオーバーしたようだ。ひどく動揺しているが、カメラを落とさないのはプロ手慣れたものといったところか。

ドアまで立ち上がって彼の手から鍵を取り上げた。

「合わない鍵で何度試しても開くわけじゃない。違う手段を探しましょう。」

「そうだよー。怖くなってもうちらがいるって。」

今度は泣きそうになったかと思えば恥ずかしくなったのか俯いてしまった。根は素直なんだろう。

「じゃあ、どうするんスか?」

俺がサナエに目配せをすると、彼女は頷き返した。

「押してダメなら?」「引いてみろ、っしょ」

俺は取っ手を握ると横に力任せに引いた。すると、思ったより勢いよくスパーンと開いた。

「俺んちにこういう部屋があったんだよな、じいちゃんによくお仕置きといって閉じ込められては横に引けば出られる部屋で─」

(ちょっと待て。なぜここでそれがあるんだ?)

同じ疑問を抱いたのか、サナエと顔を見合わせたが、ドウジは出られた喜びでカメラを手にゴニョゴニョと解説していた。さも自分が気付いたかのように付け加えながら。

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