第6話 かくれんぼ

 それにしても、いなくなったのは誰なのか。気が動転して喚いているのはドウジと言ったか、チャラチャラしたユツラーだった。

「なぁ!? ただの廃墟探訪のはずだろ!? なんでこんな目に合わさなきゃいけねぇの!!」

 先ほどは頼りにしてくれと宣言しておいてキレられても困るのだが。そもそも興味本位で誰よりも早く加入してきたとヤツに聞かされたのに、被害者面をされてはこちらも苛立つ。

「もしかしたら、持ち主が噂を流した張本人、トカ?」

サナエはこういう時に妙に鋭いことを言うところがあった。あっけらかんとした一言に毒気が抜かれたのか、彼は落ち着いたようだった。

「そうだとして何が目的なんだ? 肝試し用に貸し出します、ってコトかよ?」居丈高にドウジが問い詰める。

「わかんないケド、誰かの好奇心を刺激して中に入ってきてもらうのが目的ではあるんじゃないカナー?」

「わかんないって…あてずっぽうかよ。」

「いつもは事前には確認しないのですか?」俺はあまり刺激しないように普段の活動を尋ねた。

「前もって確認を取るケンジとカメラ役のショウゴが急に腹壊したとか言い出してよォ、ありえんくね? 俺と一緒の食べたのに俺は平気なのにさ。それで」彼は思い出したようにポケットから取り出したカメラを構えて「俺が全部一人でやるわ! って言ってやったんだわ。」

このカメラは今録画しているんだろうか。俺はカメラに詳しくないからサナエの方を向くと、何やら首をかしげていた。

「来るはずだった二人ってその人たち?」

「あ? いや、あいつらはサポートみたいなモンだからさ、俺一人ってことにしてあったけど?」

いちいち悪態をつかないと済まないのか、編集で切らない箇所は雑な対応を見せるようだ。

「じゃあ、残りの二人って…」

「ミィちゃん? どうしたの?」先ほどまでピィピィと鳴いていたカナリアが鳴き止んでいる。

カナリアが鳴き止むのは、どういう時なのか。暇つぶしに野鳥を調べていた折に見たのは炭鉱のガス漏れだと──!

「這いつくばれ!」

俺は周りの三人に咄嗟に指示した。「どうしたのミィちゃん、ねぇミ」ハジメの声が途絶えたと同時にどさりと音が聞こえた。(何だ? 何が起きているんだ? 彼女は無事なんだろうか?)と考えながら口を塞いでいても、俺の意識は朦朧としていった。

落ちる瞬間に靴が見えた気がした。男物のスニーカー…。

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