第3話 踊る心

 豆田ヨコジロウは今年で20歳になるサラリーマンだ。大学時代から交際中だった恋人の両親に挨拶に行くという一大イベントを終わらせた帰りのことだった。同級生でよくつるんでいた友人から連絡が入った。


「次のGWにさ、暇だったら肝試しに行こうぜ」


 W市郊外にある洋館に「出る」という噂は県内外に広まっており、そんな子供じみた話に乗っかるのは個人的には賛成しかねた。だが、サナエは食い気味に「何それ面白そう!」と参加の意を表明してしまった。


 詳しく話を聞いてみると思いのほか参加者は多く集まるようだった。社会に出てみると他人と知り合う機会がめっきり減ってしまうのを若干寂しく思い始めていたため、こういう集まりも悪くないかもしれない。そう考えると少し興味が湧いてきた。


 当日が近づいてきた。天気予報を見ると当日は雨になるようだった。傘を用意していくか、雨合羽でも持って行った方がいいのかとサナエと夜遅くまで話のネタにしてはようやく始まるんだと実感した。前日には何を食おうか。久々にカニを食いに行くか。

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