【改稿版】クロノユウシャ(全方位復讐譚)~最愛の姉を奪われた少年は、勇者の力を手に入れ復讐の鬼となる~「泣いて喚いて許しを乞うても、今さらもう遅い。あの世で姉さんに懺悔しな」
第72話「お前の強さはだいたい分かった。次で決める」
第72話「お前の強さはだいたい分かった。次で決める」
「一発じゃなくて連続技なら斬れると思ったのかい? だったら甘いね!」
その言葉とともにカイルロッド=デルピエロは、リュージの放つ剣檄の乱舞をするりと抜けると、一気にリュージに肉薄した。
勢いそのままにリュージの腹を蹴り飛ばす。
「ぐぅ――っ!?」
わずかに防御が間に合わなかったリュージは、腹に直撃を受けて派手に吹っ飛ばされた。
それでも『気』のコントロールと受け身によって、ダメージを最小限に抑えると、即座に立ちあがって刀を――菊一文字を構えなおす。
「ははっ、やっぱりお前は威勢がいいだけで、全然大したことがないな! どうしたどうした! そらそらそら!」
カイルロッド=デルピエロの猛攻がリュージを襲う。
カイルロッド=デルピエロは武器は持っていない。
攻撃はただ力任せに、殴って蹴るだけ。
しかしはそれはまるで巨大な金属ハンマーで殴打するかのごとく、一打が、一蹴りが、絶大な威力を持っているのだ――!
「ぐぅっ、この――っ!」
その重たく激しい連続攻撃を、リュージはギリギリのところで逸らし、かわし。
かわしきれない攻撃は、受ける瞬間に『気』を爆発的に高めることで、なんとか堪えて防御する。
『気』で強化した菊一文字と瞬間防御で、苛烈な攻撃を必死にさばいて、しのぐ。
サイガが名刀と言っただけあって、菊一文字はその刃にリュージの発した『気』をあますことなく溜め、激烈な攻撃を受けても折れることなく、リュージとともに戦い続ける。
カイルロッド=デルピエロの一方的な攻撃がしばらく続いた後、
「ちっ、無駄にしぶといね、君ってやつは。どうせ手も足も出ないんだから、無駄なことをせずにとっとと死ねよ」
どうにも攻めあぐねたカイルロッド=デルピエロは、少しイラついたように言いながらリュージからいったん距離を取った。
それでもカイルロッド=デルピエロからは絶対に負けない自信と、弱者をいたぶる余裕が感じられる。
だからリュージが放った言葉は、カイルロッド=デルピエロにとって全くの予想外だった。
「お前の強さはだいたい分かった。次で決める」
そう言うとリュージは流れるような動作で菊一文字を鞘に納めた。
そしてそのままわずかに腰を落とすと、右手をそっと柄に沿えて抜刀術の構えをとる。
「はぁ? なんだって? よく聞こえなかったんだけど?」
「次で決めると言ったんだ」
リュージはそう言うと、命を、心を!
激しく激しく、これでもかと震わせていく――!
「あはははっ! ずっと逃げ回って、なんとかかろうじて防御するしかできないでいた癖に! なのに次で決めるだって? ははっ、馬鹿も休み休み言うんだね!」
カイルロッド=デルピエロがリュージを嘲笑する。
しかし圧倒的有利な状況にあるという慢心が故に、気付いていなかった。
「馬鹿はてめぇの方さ。師匠はもう俺に斬れないものはないと言ったんだ。ならば俺がお前ごときを斬れないはずが、ないだろうが」
湧き上がってくる猛烈な『気』全てを、鞘の中に納めた菊一文字に、リュージが余すところなく注ぎ込んでいることに――!
すさまじいまでの『気』の発露に――!
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