第12話 フレイヤの罪
「姉さんが貴族たちに輪姦されたとき、笑いながらそれを見てアレコレ指示をして楽しんでいた若い女がいたそうだ。さて、この話になにか覚えはないかなフレイヤ王女?」
「あ、えっと……」
リュージの説明を聞いたフレイヤ王女が、視線を逸らして言いよどんだ。
「その女ってのはお前のことだよな、フレイヤ王女?」
「あ……ああ……」
「お前のことだよな、フレイヤ王女?」
凄味を利かせながら念押しするように問いかけるリュージを前に、フレイヤの顔は真っ青になっていた。
薄汚い庶民の男どもに、気高くも高貴なる王女の身体をまさぐられているからだけではない。
リュージの顔にどことなく覚えがあることに、フレイヤはついに思い至ったからだ。
思い出すのは7年前の夏のことだ。
カイルロッド皇子がさらって犯し、父であるライザハット王がさらに嬲り、さらには貴族たちが輪姦した町娘は、庶民とは思えないほどの美人だった。
手間と暇とお金をかけて頑張って得た自分の美しさを、生まれ持った本物の美しさで凌駕するその庶民の存在に、フレイヤはムカついてムカついて仕方なかったのだ。
だからその庶民の女が散々に犯されるのを見て――凌辱される姿をわざわざ見に言って――ざまぁみろと
しかもそれだけでなく、『ああいうことや、こういうこともしてみたら?』と提案までした。
庶民の分際で自分よりも美しいその娘が、豚のように肥えた中年貴族たちに汚され嬲られ、心が壊れていくさまを見るのは、フレイヤにとってとても楽しいことだったのだ。
そしてリュージの言葉で、今の今まですっかり忘れてしまっていた当時の記憶が、フレイヤの頭にありありと蘇っていた。
「お前は今からこいつらに散々に犯されるんだ、穴という穴に欲望を突っ込まれて、身体も心もボロ雑巾のようになるまで、女としての尊厳をメチャクチャに踏みにじられるんだよ。あの時姉さんがされたようにな」
リュージの瞳が、声が、顔が、その全てが憤怒の激情に染まっていく。
「ひっ……やめて……謝るから、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。一生かけて償うから、だからお願い、やめて――」
これから自分の身に起こることを想像して、ついにフレイヤは泣き出してしまった。
もともと蝶よ花よと大事に育てられ、幼い精神構造のまま大人になった、自己中心的で我がままなお姫様だ。
粗雑な薄汚い庶民の男どもに犯しつくされるなど、フレイヤの心ではとても耐えられはしない。
「泣いて喚いて後悔しても、今さらもう遅いんだよ。お前は今から人ではなく、男を受け入れるだけの生き人形になるんだ。お前に待っている未来ははただ一つ、いつ終わるとも知れない性欲のはけ口とされ続けること。死ぬよりも辛い絶望だけだ」
「まさか、リュージ様はわたくしを最初からこうするつもりで――」
「なんだ? 今さら気付いたのか? 愚かな父親に似て本当に馬鹿な女だな、お前ってやつは」
「そんな……リュージ様はわたくしを助けてに来てくれた白馬の王子様じゃなかったのですか?」
「俺が白馬の王子様だと? はっ、あはははははっ! そうかそうか、俺の演技もなかなかのものだったわけだ。復讐が全て終わったら、いっそ役者にでもなってみるかな?」
フレイヤの甘ったれたお花畑のような考えを、リュージは盛大に笑い飛ばした。
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