最終幕 エピローグ

ドアを開けるとそこには握手を交わせば腕の骨が折れてしまうのではないかと思うほどに骨と皮でできた少々不気味な男が立っていた。私はその男の本当に人の心を持っているのかと疑いたくなるような冷たい目の間から漏れ出す知的で不思議な印象により私はその〝男〟に強い興味と厚い好意を感じた。

「実験がしたい。」

〝男〟はぼそぼそとしているがそれでいて深みのある声でそう言った。どうも彼は猫が大好きで、趣味で猫の様々な研究をしているようだった。どうも彼は人に猫の遺伝子の一部を入れ、一時的に人間を猫化させる実験がしたいらしい。そのために被検体がいるためアルバイト募集の張り紙を貼ったのだと言う。

「これが成功したらすごいよ。だって自由気ままに猫になれるどころか兵器やスパイ活動にだって応用できるかもしれない。」

彼の目はいたって本気だと言った眼差しでそれどころか私には嬉嬉としているようにさえ見えた。

と、こうして人間だった頃の思い出に浸っていると再び居間の襖が開いた。


「おいおい。またこんな所に死んだ猫を置きっぱなしにして。実験が終わったら捨ててくれって言っただろ。そもそも【猫に本当は自分は人間なのではないかと錯覚させる実験】なんてなんの意味があるんだよw藤田くんの考えることはいつもわからん。」

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吾輩は猫であるを微塵も知らない私が吾輩は猫であるという物語を書くということ @hibikiwwtarako

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