威光
十分に身体能力が強化された私による、力の乗った一撃。自分で言うのもなんだが、今日の戦いの中でも、ちょうどよく力の抜けた最高のパンチだったはず。
だったはずなのに……
「っ!? なっ!?」
その最高のパンチは、男の手の中に見事に落ち着いていた。
そんな、ばかな、決まると思ったのに、そんな困惑の感情が私の中で渦巻くと同時に、この男の強さを本能的に感じとる。
おそらく、この男は私と同等、あるいはそれ以上の強さだ。少なくとも、ついさっき戦ったチェス隊メンバーよりは遥かに格上だと確信した。
しかし、そうなると疑問が1つ浮かび上がる。
(なんで……ここまでの強さを持つ男なんて、聞いたことがない)
この私に匹敵する強さを持つ男なんて、ただでさえ男が貴重な神奈川派閥で話題にならないはずがない。
(神奈川派閥側がいざと言う時のために意図的に隠していた……? いや、ならあの会議の時に投入しているはず)
と言うことは、おそらくだが、神奈川派閥に最近入ってきた即戦力である線が1番濃い。いやむしろそれしか考えられない。それ以外を考えるとなると、あまりにも現実離れしすぎる。
(日本一の科学力で人造人間を作ったとか……そんなぶっ飛んだ考えになる……さすがにそれはない)
作れたとしても、スキルの特性上、人間にしかスキルは宿らない。人造人間を作ったとしても、スキルがはびこる世の中でそれによる戦力アップの幅などたかが知れている。
(だとしても、チェス隊上位の化け物レベルでは強くないはず。慎重に相手すれば――――)
「ガラ空きだぞー」
その時だった。急に破裂音が聞こえたかと思うと、私の視界がぐわんぐわんと揺れだす。
(あ? 何? 何?)
この男が現れた時は想像もしなかった出来事の連続で、脳が一時的な混乱状態に陥る。
気がつくと、私はあの男の目の前にいたのに、いつの間にか後ろにいた。
(吹っ飛ばされた? 一体何が……)
いやダメだ。これ以上混乱してはダメ。これ以上隙を見せてしまえば、更なるダメージを受けてしまう事は間違いない。ここはやせ我慢でも、余裕があるように相手に見せて、この混乱が落ち着くまで時間を稼がなくてはならない。
その後のことはあまり覚えていない。とにかく、自分は余裕だとそう見せるのに必死だった。
やっと正常な判断が取れるようになった時には……
「……へぇ?」
ついさっきとは見違えるほどの、悪魔的な威圧感を放つ存在が、そこにいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます