遅れて登場

 めちゃくちゃ遅れてしまった。


 現場に到着した時、第一にまず思ったことがそれだった。


(ほんっと失敗したなぁ……)


 俺は緑色の全身タイツの女の腕を掴みながら、ここに来る途中に起こった悲劇について思い起こしていた。









 ――――









 民間の訓練所から出た俺は、もしかしたら自分と渡り合える敵と出会えるかもしれない。その期待のままに、ブラックを肩に乗せ、反射を使って空中に飛び立った。


 ……神奈川本部とは真逆の方向に。


「ワン! ワウン! ワンワン!」


「ん? どうしたブラック……あ」


 それに気づいたのは、ブラックが懸命に吠えて俺に伝えてくれた後だった。


(ヤッベ……!)


 俺は反射を使い、空気中のほこりや砂を反射して急ブレーキをかけ、元いた場所に戻ろうと、逆方向に移動する。


 が、時既に遅し。逆方向だとわからないまましばらく移動していたのと、神奈川派閥に来てまだ1週間とちょっとしか立っていない俺には、自分の力だけで元の場所に戻るすべはなかった。


「どこ? ここ……」


 そんなこんなで、中学生の時以来の大迷子をぶちかまし、今に至る。









 ――――









 結局1人ではどうしようもできなかった俺は、近くにいたおばちゃんに場所を聞いてから、現場に向かったというわけだ。


(それにしても、大阪の時といい、今回といい、おばちゃんに助けられてばかりだ……おばちゃんこそ、真の人類だな!)


 全国のおばちゃんに、改めて敬意を評しつつ、その感傷に浸っていると、目の前で俺に腕を掴まれている全身緑タイツ女が喋りかけてきた。


「……そろそろ離して欲しいのだけれど?」


「ん? ああ……悪い」


 俺は緑タイツの一・般・人・の手を離し、周りを見渡す。


 見たところ、この場にいるのは緑タイツの女と頭を貝殻に食べられている女の2人のみ。


 一応、俺の腕の中には、王馬と戦っている時に袖女と一緒に観戦していたチェス隊の女がいる。


(めっちゃボコボコにされてるけど……)


 どうやら既にことが終わった後のようだ。


(スマホに連絡があった敵は……)


「……なぁ」


「何かしら?」


「連絡にあった犯罪者たちってどこにいったかわかるか?」


 この2人はおそらく無関係。俺の腕の中にいるチェス隊の女をボコボコにした後、どこかに行ってしまったのだろう。


(神奈川本部の内部に入った可能性が1番高いが……)


 と、その質問をした瞬間、緑タイツの女は大きく笑い出した。


「アッハハハハハハ!! ……知りたい?」


「お、頼む」


 どうやら教えてくれるようだ。よかった。


「じゃあ……」


 目の前に緑タイツの女が現れ……


「教えてあげる」


 その拳が、俺の目の前に現れた。


 

 


 

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