2人になっただけで

 今まで私たちの戦いを静観していたシュルカーがついに動きだし、その一撃必殺のスキルをいかんなく発揮してきた。


 回避すること自体はそこまで難しいわけではない。それよりも、貝殻に飲み込まれてしまえば1発アウトのプレッシャーで、1回貝殻を回避するたびに大きく精神力を削られてしまっていた。


「……っ! はぁー、はぁー」


 まだグリードウーマンたちと交戦して30分も経っていない。なのに感じる体の疲れ。普段ならこんな短時間で息を切らしたりしないのに。


「ふー……ふー……ふー……」


「……しんど」


 私だけでなく、後から参戦してくれた2人もそのプレッシャーで体力をかなり持っていかれている。特に里美は近距離戦闘をしなければいけない分、シュルカーに最も多く狙われているため、1番体力が少なそうだ。


(もう里美には頼れないか……)


 と……


「何ぼーっとしているの!?」


 グリードウーマンが私に向けて超速接近。ものすごい速度で私の背後に回り込み、手刀で首筋を狙ってきた。


 しかし、私だって反応速度には自信がある。すぐさまグリードウーマンの速度に対応し、背中を見せた状態で手刀を掴んだ。


「あら? 食べ頃だと思ったのだけれど……間違えたかしら?」


「残念ながら……まだまだ生焼けだよ!!」


 そう言いながら、体をグリードウーマンの方に動かし、パンチやキックの応酬が始まる。


(今だ! 2人ともグリードウーマンの背後から――――)


 が、いつまで経っても2人がグリードウーマンの背後に回ってこない。どういうことだと2人の方を横目でチラリと確認する。


 そこには、シュルカーのスキルに翻弄される2人の姿があった。


(なんで…… 1人ならわかるけど、2人がかりなら十分対処できるはずなのに……あ!)


「そら!」


 シュルカーのパンチが紫音のみぞおちに直撃した。


「あっ……が」


 疲れ切った体にみぞおちへの一撃は痛すぎる。私のその予想は当たり、シュルカーの目の前にもかかわらず、紫音はその痛みにうずくまってしまった。


「終わりだ」


「あ……し、しまっ――――」


 シュルカーはそれを見過ごさず、待ってましたと言わんばかりに貝殻に変形。おぞましい雰囲気をただよわせながら、その貝殻を開き――――


「紫音先輩!」


 もうすぐで飲み込まれるといったタイミングで、里美がその間に割って入りこむ。


「分離!」


 里美は自分の体を2つに分け、その片方を囮にすることで紫音を担いだ状態で危機をしのぐことに成功した。


「がぐっ……」


「あら? よそ事でも考えていたの?」


(こいつら……)


 最初、こいつらは寄せ集めで、チームワークなど微塵もないと思っていた。


 しかし、それは違った。2人が自分に適した役目を最低限ではなく、最大限果たすことで、単独行動しているように見えて、実はチームワークとして成立している。お互いの強さを信用しているのだ。


 対して、私たちは2つに切り離され、チームワークはボロボロ、スキルの相性も悪い。


(このままじゃ……)


 何か悪い予感がする。何かとてつもなく悪い予感が。


 そして、その悪い予感は的中し――――


 数分後、私たち3人はボロ雑巾のようにズタズタにされた。

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