1人が2人に
里美とグリードウーマンの接近戦。それは一見、拮抗しているように見えるが、明確に確実に、里美が押していた。
理由は簡単、里美が一方的に攻撃しているからだ。
里美が強酸スライム状態である以上、自分の体をぶつけて攻撃するしか攻撃手段が存在しないグリードウーマンにとっては、攻撃手段がなくなったに等しい。
それに加え、回避も粘液が飛び散るため、大げさに動かないと回避できない。飛び散る水滴にも気を配らなければならないのだから、体力的にも精神的にもゴリゴリと削られているはずだ。
(いいよ里美……できるだけいやらしくいけ……)
「……どうする? 加勢、する?」
「やめとこう。変に割って入ると里美の足手まといになるかも」
里美は近接戦闘のスペシャリストだ。変にそこで後押ししてしまうと、かえってリズムを崩してしまい、邪魔になりかねない。
「ふふ……」
(……ん?)
そう思っていると、里美のパンチを回避しながらグリードウーマンが不敵な笑みを浮かべる。
「よくもまぁ、私ばかりに注力できるわね……もう1人いるのに」
その瞬間、里美の背後に、人1人が入れそうなほど大きなホタテの貝殻が出現。そこからシュルカーが現れ、手に持っているナイフで背後から切りかかろうと……
「読めてるよ」
私は風の力で一気に加速し、シュルカーの一撃を真剣白刃取りの要領で受け止めた。
「貴様……!」
「先輩! さすがです!」
敵のイラついていそうな言葉と里美の私に感謝する一言、それを同時に耳に入れ、少し複雑な気分になる。
「邪魔をするな!!」
シュルカーはその言葉と同時に、体をホタテの貝殻に変形させ、私を飲み込もうとガパッと貝殻が開く。
(これだけは貰っちゃダメ……!!)
私はそれに飲み込まれないよう、後ろにいる里美を抱えてその場から瞬時に離脱。ある程度の距離を取る。
「里美、大丈夫?」
「ありがとうございます! あのままだったら飲み込まれてました!」
シュルカー単体だけで言えば、身体能力が高いわけではない。だが、シュルカーの強さの秘密はそのスキルにある。
スキル名
スキル所有者 シュルカー
スキルランク hyper《ハイパー》
スキル内容
体を貝殻に変質させ、その貝殻の中に入った対象物を好きな場所に転移させる。
シュルカーの能力はあの貝殻に飲み込まれてしまえば1発アウトのヤバすぎるスキル。あの貝殻に飲み込まれてアメリカにでも飛ばされてみろ。それは事実上の戦線離脱を意味する。
「シュルカー、珍しいわね? あなたが自分から戦闘に参加するなんて」
「……少し興味が湧いてな」
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