スライム
当たるかと思われた里美の追撃。しかし、グリードウーマンはその雄叫びとともに見事に反応、そのまま回避されてしまった。
「……これは」
回避した瞬間、グリードウーマンが何がぼそりとつぶやいたような気がしたが、今はそんなことどうだっていい。
今はチェス隊屈指の特殊型インファイター、青葉里美が前にいるのだから。
スキル名
所有者 青葉里美
スキルランク hyper《ハイパー》
スキル内容
体をスライムに変えることができる。スライムを形作る粘液は地球上の液体に変換できる。攻撃性のある液体であればあるほど、変換するのに練度が必要。
これが里美のスキル、
しかし、攻撃性のある……要するに、人が触れると体に何かしらの異常が起こるような液体に変換するのには、その分練度が必要になるため、覚えている攻撃性液体変換は1つしかない。
(でも、その1つが超強力)
そう考えている間にも、里美の一撃がグリードウーマンの頬を掠める。普通なら頬に少し跡が残るだけだが、里美が付けたその跡はじわじわと広がり、皮膚を溶かして血を露出させた。
「……やっぱり、強酸ね?」
(ご名答……!)
里美が唯一ものにしている攻撃性液体変換。それは『強酸』だ。
これがまぁ面倒臭い。どんな攻撃でもまともに貰えば危険な状態までじわじわと追い詰められる。そしてその性質のため、腕でガードしても、逆に溶け出し、両腕が使い物にならなくなってしまう。
逆に反撃しようとして、パンチしてしまえば、強酸スライムに拳が溶かされてしまう。
よって、強酸スライム状態の里美の攻撃は、回避するしかないのだが、そこにもスライムならではの罠が仕込まれている。
「ハァッ!!」
「……っぐ! 避けたはずなのに……」
里美が突き出した拳から粘液が飛び散り、グリードウーマンの肌に付着。その部分が溶け出し、ダメージを負ってしまう。
そう、これが里美のスキルの厄介なところだ。スライムは半液体であるため、勢い良く拳を突き出すと所々に粘液が飛び散る。たとえパンチを回避したとしても、飛び散った粘液が体に付着してしまうと、せっかく回避した労力が無駄になってしまう。
(間を詰められてここまで厄介なのもそうそういないでしょ?)
スライム状に体を変質させ間合いを詰め、近距離戦闘に持ち込み、強酸で相手の体をじわじわと溶かしていく。近距離戦闘において、ここまで厄介な兵士を私は見たことがない。
が……
(グリードウーマン……里美のスキルを何となく察してたな……)
心の中で皮肉を吐くのと同時に、私はグリードウーマンのその観察眼に舌を巻いていた。
普通なら、近距離戦闘になればよっぽどのことがない限り、打ち合ってくれるはず。なのに、グリードウーマンは最初からわかっていたかのように、里美に反撃せず、回避に徹していた。
雑誌やバラエティー番組などで私たちの事はそこそこ紹介されているが、さすがにスキル内容は公開していない。
そのため、グリードウーマンは里美の少しの行動で、ある程度のスキル内容を理解できていたということだ。
(どんだけ戦闘センスあるのよ……グリードウーマン)
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