人数不利

「黙れ! 神奈川の犬が!!」


 私が犯罪者たちの前で堂々と宣言した瞬間、私の視界の中にいた犯罪者の1人が両手をドリルに変形させ、私を殺そうと向かってきた。


「さすがに避けられるよ!」


 こんなミエミエの攻撃が回避できないはずがない。余裕を持って、一呼吸おいてから回避し、私の元いた場所を通過した敵の背中に狙いを定め、旋風攻撃をお見舞いする。


「グウワッ!?」


 その敵は旋風攻撃に対して対策しているわけでもなく、気づいてもいなかったようで、もろに攻撃を受け、ジェットパックごとずたずたに切り裂かれ、地面に落下していった。


(よし……!)


 無傷で1人落とせたのは、相手にプレッシャーをかけつつ、私の体力的も省エネできるので、この1人撃破は、普通の1人撃破とはわけが違う。あまりにも大きい1人撃破だ。


 私の予想通り、さっきの1人撃破でかなりのプレッシャーを与えられたられたらしく、犯罪者たちの顔から動揺の色が隠せていない。


(よし、このままいけば――――)


「落ち着きなさいあなたたち……」


 この犯罪者たちの集まりの中でも特にやばい人物である緑色のタイツにローブを着込んだグリードウーマンが言葉を発した。


「今のはあのバカが愚かだっただけのこと……動揺する必要はないわ……」


 グリードウーマンは、我が子をなだめる母親のような声で、周りの犯罪者たちを落ち着かせる。


「そ、そうだ……!」


「どうせ、1人だけなんだ……俺たちに勝てるわけないんだ……!」


「安心なさい……もし危なくなったら、私とシュルカーがフォローに入るわ……思う存分戦いなさい……」


(ちぃ……)


 せっかく崩した犯罪者たちの精神状態を通常の状態に戻されてしまったこともそうだが、何よりも、グリードウーマンとシュルカーが私を相手と捉えていないことに、私は苛立ちの感情を覚えた。


 そこからは犯罪者たちも冷静になり、絶対に1人では戦わず、2人以上で固まって攻撃を仕掛けてくる。これが地味なようでかなり厄介だ。いくら私が遠距離も近距離もこなせるハイパー無敵人類だとしても、手数はあちらの方が上。必然的に体力の消耗が激しくなる。


(このままじゃジリ貧だ……一気に大技を仕掛けるしかない!)


 私は怒涛の攻撃の中にあるわずかな隙間時間を見つけて、そこのタイミングで一気に竜巻を発生させる。


「なんだ!?」


「構わん! 攻撃を続けろ!!」


 私を中心に発生したその竜巻は、その風圧で相手の銃弾やスキルによる攻撃をいともたやすく打ち消す。そしてその間に、私の準備は完了していた。


「量産型竜巻!!」


 少しのクールタイムを要するが、発動さえしてしまえば、一瞬で大量の竜巻を作れる私の得意技、量産型竜巻。


(シュルカーとグリードウーマンは倒せないかもだけど……それ以外なら!!)


 まずは有象無象を片付ける。その後、シュルカーとグリードウーマンとの戦いに集中する。このプランで行こう。


「あら、おいしそうな攻撃ね?」


 しかし、激しい戦いのせいか、頭の中からこぼれ落ちていたのだ。


「いただきます」


 グリードウーマンの手のひらに大量の竜巻が吸い込まれた。


「はぁ〜〜……美味し……」


「しまっ……」


 その瞬間、腹に激痛が走る。


「お……お前……」


「あら? ごめんなさい。隙だらけだったものでつい」


 激痛が走る腹を見ると、そこにはグリードウーマンの拳が私の腹に深く沈みこんでいるのがわかった。


(ぬかった……奴のスキルは……)





スキル名 強欲グリードの手


所有者 グリードウーマン


スキルランク super《スーパー》


スキル内容

 手のひらから、物理攻撃以外の特殊な攻撃を全て吸い取る。吸い取ったエネルギーの分だけ、身体能力が向上する。





「さぁ、第二ラウンドですよ?」

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