黒のビショップVS凶悪犯たち

 急にアナウンスで発令されたチェス隊への命令。私はそれに従い、いち早く外に飛び出し、様子を確認する。


「……な!」


 そこに広がっていた光景は、にわかには信じがたいものだった。


(リストで何度も見た事ある人たちばかり……シュルカーに……グリードウーマンまで!?)


 名だたる凶悪犯たちが背中にジェットパックのようなものをつけ、空中に浮遊し、神奈川本部に攻撃を仕掛けている。こんな光景は生まれて初めてだ。

 

 数にして10人程度だろうか。もし相手が有象無象なら、問題なく片手で捌ける人数だが、あまりにも相手が悪すぎる。


 一人一人が、神奈川派閥の歴史に泥を塗り、確保できないまま姿を消した凶悪犯。一人一人がチェス隊級の実力を持つのは間違いないだろう。


 特に、顔を大きなホタテの貝殻で隠しているシュルカーと、全身緑タイツが特徴のグリードウーマン。この2人がとにかくやばいのだ。


(いくら強いといっても、私は彼女らのスキルを把握している……なら行けるか……?)


 応援を呼ぶにしても、ここにいるのを確認できたのは、日菜っちとひよりだけだ。応援が来るのは、もう少し先の話になるだろう。


 なんで間の悪いタイミングなんだ。せめて、ひよりと日菜っちが目を覚ましたタイミングなら、まだ何とかなったのに。


(どっちにしても……私がやらなきゃ)


 他のチェス隊が来るまで、神奈川本部がどれだけ持ってくれるかわからない。こいつらを倒せる可能性を1パーセントでも上げるためにも、私が前に出なければならないのだ。


 この発令は一般兵士たちにもスマホを通して伝えられるため、神奈川本部にいた子たちは避難しているはず。これなら周りへの被害を気にせず、フルスロットルで戦える。


「行くぞ……!」


 私は風に乗り、空中浮遊する凶悪犯たちに一気に接近。その中の1人をその勢いのまま蹴り上げた。


「な、なんなのォォォ!?」


「ち、もうかよ……」


「ふん、神奈川の飼い犬が……」


 私の登場に対して、驚愕する者や、到着するまでの早さに焦る者、待ってましたと口角を上げる者、悪態をつく者など十人十色。いかにも犯罪者たちの集まりっぽい感じだ。


 しかし、私は凶悪犯たちから発せられる圧に屈することなく、堂々と宣言する。


「私は黒のビショップ、旋木天子! お前たちを……ここで止める!!」


 今ここに、黒のビショップVS凶悪犯たち。その火蓋が切って落とされた。

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