せめて一撃

 無意識に作り出した回転するオーラ。それは無意識からか、自分で意思を持ってやっている時とは比べ物にならないほど超高速。それはとどまるところを知らず、どんどん回転速度を上げていた。


「……あ?」


 石像たちに攻撃を当てられ続けながらも、作り出された確かな回転に気づく。


 何度も殴られ切り裂かれ、逆に脳が冴えていたのか、回転を自覚してから、それらを全てを理解するのに時間は入らなかった。


(これは……そうか……)


 なぜここまでの高速回転を可能としているのか。それは無意識だからこそ、操作するというプロセスを無視することで、自然に流れる滝のように、激しい回転を生み出しているのだと。


 だからこそ、考えるな、感じろ。回転することに意識を向けるな。その回転したオーラを当てることに意識を向けるのだ。


 私は、エメラルドグリフォンに乗る日菜をじっと見つめ続ける。ダメージを受け続けた体から血が滴る。


 それでも、私は日菜を目で追うことをやめない。本能で理解できているからだ。この一撃を放った時、自分の持つすべての力を出し尽くしてしまうと……そうわかっているからだ。


(まだ……もう少し……)









 ――――









(なんなのだ……?)


 あたしは目の前で起こっている戦いに、あたしの目が狂っているのではないかと思っていた。


 こんなもの、誰がどう見ても勝負は決まったと、そうおもうだろう。


 しかし、現に勝負はまだ続いている。その証拠に、石像の大群にまみれても、彼女は醜く足掻いていた。


 その瞳に宿る炎はギラギラと輝いており、まるでこちらを今から殺さんとするような、そんな目をしていた。


(ひより……一体……)


 その風貌は、山梨派閥へ遠征に行く前に見たひよりとは似ても似つかない。見た目は一緒なのに、全く違う別人のようだ。



(……あたしがいない間に、何があったのだな?)



 そう思ったその瞬間、ひよりの右拳に光が宿る。


「はっ……?」


 その光はなくなることなく、強い光を放ちながら周りから何・か・を吸い取っていき……





 その姿はまるで。





「黒ジャケット……?」





 神奈川派閥の歓喜すべき1日を、絶望に変えた彼を想起させた。

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