宿せ

 右手の中に光を宿し、私は日菜に狙いを定める。


 なぜだかわからないが、日菜は回避行動を行わず、エメラルドグリフォンを滞空させ続けている。


 日菜が作り出した石像は、生き物と同じ形をしているが、あくまで意思のないただの造形物。主の意思に従うことを除けば、石の彫刻と何ら変わりない。日菜の指示が出ない限り、行動する事はありえないのだ。


(いける……!!)


 いつもの私なら、何かを誘っているのかと勘ぐってしまうところだが、あいにくと、今の私にはそんなことを考えられる脳のキャパシティーは存在しない。今の俺には、光り輝くオーラの塊を当てることしか頭になかった。


(ああ……感じる……)


 光を宿す右拳からは、とてつもない熱気が溢れ、自分1人では到底ひねり出せないようなオーラの波動を感じる。自分でこれを作り出すことができたという事実に心が震える。


 ああ、うれしい。もうそれしか考えられない。


 後はこの光輝く右拳を振り抜くだけだ。


 日菜はやっとこさ自分を取り戻し、エメラルドグリフォンを動かし始めたがもう遅い。既に私は発射準備を整えている。


「ああ……」


 腑抜けた声とともに、野球選手の投球フォームから光り輝くオーラがついに発射された。


 その姿はまるで流れ星。いつものオーラは実体はあっても目では見えない。


 しかし、このオーラは違う。その輝きによって丸見え。私のスキルの強みである見えない遠距離攻撃が役目をなしていないが、威力は上がっていることが見て取れた。


(ん……眠い……)


 自分の中からオーラがごっそり抜かれていくのを感じる。それと同時に襲ってくる急激な眠気。ついさっきまで体を動かしていたことも相まって、重くなっていくまぶたを止める力がない。


(……あえ?)


 小さくなっていく視界の中で、私は確かに見たのだ。


 輝くオーラが軌道を変えて、日菜に直撃するのを。


 

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