伝説上の石像

 日菜は私の一撃を受け切ると、両手を地面につけ、赤い火花を発生させる。


(来た……!!)


 何度も見てきたそのフォーム。赤い火花。それは日菜の切り札の発動を意味していた。


「くるんだなー! 石像たちー!」


 その声を皮切りに、地面の至るところがボコボコと膨れ上がり、無数の石像がその姿を現す。


 その石像は仏像だけではなく、猿型や虫型、果ては普通の人間型のもいる。人間型が地面から這い出てくる姿は、まんまゾンビだ。


 石像回遊。そのスキルの真骨頂はその生産性にある。日菜のスキル、石像回遊は石像を生み出すのに体力を消費するのだが、その体力消費量が非常に少ないのだ。


 要するにコスパが良い。良すぎると言っていい位だ。


 現に、もう50体近い量の石像を生み出しているのに、息切れ1つしていない。ゲームのMPのように、能力を使用するのにエネルギーを消費する系統のスキルにとっての共通の弱点である、エネルギー切れがないのだ。


 しかし、どれだけ召喚しようと石像は石像。いくらいても全方位攻撃1発で瓦解してしまう。


 ではなぜ、日菜は白のルークなのか。


「行くのだなー!」


 その瞬間、日菜の目の前に、今までとは比較にならない大きな盛り上がりが発生する。


「エメラルドグリフォン!!」


 美しく澄んだ緑色の体をこれ見よがしに見せつけ、伝説上の存在、グリフォンがそこに顕現した。


(宝石も……石……か)

 

 

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