新必殺技
地面から出現した人と同じサイズの仏像。それはガリガリと石を擦るような音とともに動き出し、構えを取った。
これが日菜のスキル、石像回遊の能力だ
スキル名
所有者
スキルランク hyper《ハイパー》
スキル内容
石像を地面から出現させ、意のままに操る。石像を呼び出すたびに体力を消費する。
私と日菜は昔からの付き合いだ。お互いのスキルの詳細も、その弱点も全て知っている。
なので、ここまでの展開は私の予想を超えてはいない。最初は手を抜いてかかってくることも、私の一撃を受けて、本気で来ることも予想していた。
(くる……)
「行くんだなー!」
日菜は仏像に命令を出し、仏像はそれに従って私に向かって走り出した。そのフォームは陸上選手と見間違えてしまうほどきれいで、とても仏像とは思えなかった。
「さらにさらにー!」
白のルークはこれだけでは終わらない。次から次に地面から仏像を生み出し、先に生み出した仏像と同じように、私に向かって走り出させる。
ただ、私は日菜のスキルの弱点を知っている。一見、数で有利をとられたように見えるが、その実、有利でもなんでもないのだ。
「ふっ……」
私は強く踏み込み、いつも通りオーラナックルを撃つ。そうすると、仏像はいとも簡単に破壊され、その体を砂に変えて消えていった。
これが日菜のスキル、石像回遊の弱点。それは、このスキルで生み出すものがすべて石製であるため、耐久性がほぼ皆無な点だ。
いくら数で有利を取ろうとも、結局はすべて石製。私のオーラナックルでも、余裕を持って対処できる。
仏像を一瞬で破壊した代償に、仏像に使われていた石が、大量の砂埃になり、目くらましとして訓練所に漂う。これでは、オーラナックルを使うにしても、どこに日菜がいるのかわからず、逆に外れた攻撃からこちらの場所を察知されてしまう可能性がある。
「ふんっ!!」
しかし、私は動揺せず、冷静にオーラバーストを発動。全方位から飛び出すオーラの波動により、周囲の砂埃を一気に吹っ飛ばした。
そして、日菜のいる方を確認すると、オーラナックルを放つのではなく、日菜がいる方向へ向かっていく。
「だな!?」
これには、さすがの日菜も混乱が隠せないようだ。それもそのはず、従来の私なら、このタイミングで選択する行動は、相手との距離を縮めるのではなく、オーラナックルで遠距離から攻撃しただろう。
普通に考えて、オーラナックルで遠距離攻撃を仕掛けた方が明らかに安全だ。わざわざそんな安全策があるのに、距離を詰める意味がない……と、日菜は考えているのだろう。
ただ、私は知ったのだ。
戦いとは、いかに相手の固定概念を覆せるかだと。
(行きますよ! 新必殺技!)
オーラを回転させる傍ら、密かに開発していた新必殺技、それをここで見せる時だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます