神奈川会議 その2

 神奈川が誇る白のキングの3位にする発言。しかし、それを言われて黙っている大臣たちではなかった。


「なっ、何を言っているんですか八木はちのき様!」


「そうですよ! 八木様が言っていることは、考える中で最悪の選択です!」


「精密検査をした後でも遅くないはずです!」


 まるで鳥の餌やりのように、大臣たちが身を乗り出して白のキングの発言に否定的な言葉を述べる。


「だから……うぬぅ……」


 白のキングも、さすがにここまでたくさんの否定的な意見をもらうと思っていなかったのか、かなりたじたじになってしまっている。発言しようとしても周りの声にかき消される。白のキングにとっては悪い流れだ。



 が、そんな悪い流れを断ち切る救世主が現れた。



「黙れぇぇ!!!!」



 その救世主とは、神奈川ランキング2位、黒のキング。白のキングとは対照的に、黒い髭を蓄えた黒のキングは、白のキングの優しそうな雰囲気とは対照的に、他人を射殺さんばかりの威圧感を放っていた。


「はっちゃんが何か喋ろうとしているだろうが!! 話を聞け! 僕たちは幼稚園児じゃないんだぞ!!」


 黒のキングは怒鳴りながら大臣たちを叱責する。それに気押されて、大臣たちはみんな黙ってしまった。


「さぁ、はっちゃん」


「すまぬ、まるちゃん」


 黒のキングは静かになったことを確認した後、白のキングに話しかける。白のキングはその言葉を受け取り、再び発言する。


「皆の言う通り、確かに怪しいところがあるのもわかる。じゃが、それを差し引いたとしても、比較にならないほどの大きなメリットがあるのじゃ」


 大きなメリット。と言う言葉に、大臣たちはピクリと反応する。


「まず単純に、神奈川派閥の戦力向上。彼をうまく使えば、さらに傘下の派閥を増やすことができよう」


 これは当たり前の話。誰でも思いつく単純なメリットだ。


「さらに、男性ランキングのランカーたちの意欲向上、最近の男性兵士たちは自分の地位に満足しているようすだったからのう。いい刺激になってくれるはずじゃ」


「……それは、彼に憎まれ役をしてもらう、と言うことですか?」


「悪く言えばそうじゃが、白のビショップを倒したのなら、今のぬるま湯に浸っている男性兵士など、軽くあしらえるはずじゃ。逆にやられてしまえば……その程度だったということじゃろう」


 その言葉を聞き、大臣たちは少しの間思案する。やがてその中の1人、内務大臣が声を上げた。


「ですが、やはり他派閥の内通者と言う可能性はあります。疑惑がある状態で神奈川内を好きにさせるのは愚策かと思われます」


「問題ない。資料によれば彼は東京派閥出身じゃ。東京派閥と同盟を組んでいる以上、向こう側がわざわざ内通者を送り出す必要性は無いはずじゃからな」


「出身地情報を偽造した可能性もあります!! 八木様はもっと疑うことを覚えるべきです!!」


 内務大臣は黒のキングに一度止められたのにもかかわらず、再び激昂。白のキングに対して明確な怒りをぶつける。


 だが……


「ふふ……」


 白のキングは笑っていた。


「……何がおかしいんですか」


「じゃあ、お前は出身地に東京派閥と書いた者全てを疑うのか?」


「…………」


「田中伸太の他にも、東京派閥からこちらに移住した者は山ほどおる……いちいち疑っても仕方ないじゃろう?」


 白のキングのその言葉に、ついに内務大臣は沈黙。今ここに勝敗は決した。

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