神奈川会議
「名前、田中伸太。年齢17歳、出身地は東京派閥、誕生月は非公開、スキルは『身体強化』、その名の通り、身体能力を向上させるスキル……」
伸太が犯罪者狩りを始めた頃、神奈川本部。その会議室では、田中伸太の事について緊急会議が開かれていた。
「で……どう思いますか、田中伸太は」
会議室にいるのは合計で6人。首相、異能大臣、外務大臣、内務大臣、そして、神奈川ランキング2位、黒のキングと、神奈川ランキング1位、白のキングの6人。ちなみにキング以外は全員女性だ。
「……というか、何者なんでしょうか? いきなり神奈川ランキングに入ってきてこれは……」
まず、内務大臣が疑問の声を述べる。内務大臣として、いきなり入ってきた者に対して不信感を抱いているようだ。
「わかりかねます。出身地が東京派閥と言うのも、別におかしい部分ではないし……」
それに対して、首相が返答する。神奈川派閥と東京派閥は現在同盟を結んでいる。なので、東京派閥から神奈川派閥人が来るのはおかしいことではない。むしろ、優秀な男を東京派閥から引き抜くことも同盟を組んだ理由の1つなのだ。
普通なら、優秀な男が東京派閥に来たことは喜ばしいことなのだが、その男が引き起こした功績が問題だった。
「1日で14人の犯罪者を確保、うち1人はチェス隊を殺害した経験もある実力者……さらにその日のうちに白のビショップである王馬沙月に勝利……」
わからない人に説明すると、1日であげる業績としては、目を疑ってしまうレベルだ。例えるなら、運動を初めて1日の初心者がオリンピックで優勝してしまうレベル。とにかくぶっ飛んでいる。
「さすがに疑ってしまいますね」
「はい。私もそう思い、東京派閥の知り合いに田中伸太と名の付く兵士を調べてもらったのですが……」
外務大臣のその発言に、全員がぐっと身を乗り出す。それも当然だ。神奈川派閥からすれば、田中伸太は超新星のように現れたスーパールーキー。そんな男の過去を調べることができ、それが正当なものであれば、神奈川派閥にとってこれほど喜ばしい事は無い。
「東京派閥には、田中伸太と言う名は通っていないようでした」
それを聞き、全員で示し合わせたかのようにうつむく。出身地である東京派閥からも情報を得れないとなると、こちら側で得られる情報はほぼないからだ。
「はぁ、これで手詰まりですか」
「では、田中伸太の処遇は?」
「ここまで優秀な男は滅多にいないですから、ランキングをあげておいても良いかと」
「しかし、明らかにおかしいです。ここに読んだ時は白のビショップとのいざこざで対話が流れてしまいましたし、もう一度彼を神奈川本部に呼び出し、精密検査を――」
議論が白熱しだしたその時、ある1人の人物が声を上げた。
「……静まりなされ」
その声の主は神奈川ランキング1位、白のキング。普段はこちら側にあまり口出ししない彼が、この討論に参加してきた事は、大臣たちを黙らせるのには十分な衝撃だった。
「これは、俺の意見なのじゃが……」
その蓄えた白い髭を優しくなでながら、その口から言葉を発した。
「俺は……田中伸太を3位に上げたいと思っておる」
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